読んで役立つ建設基礎知識一覧

2018.01.19

土工①

   概要             建設工事の代表的工種である土工。とび・土工など工種としての名称でもあるが、ここでは工事種別として取り上げて紹介する。          建設工事の基本となる工種       土木、建築を含めて土工は、多くの工事に係わる工種である。土木では、道路や鉄道、河川、上下水道などのライフライン、建築では基礎工事などだ。では、建設工事でどこまでが土工で、どこからがその他の工種なのか、明確に区分するのが難しい部分もある。その代表的な例が道路だ。   特に立体交差が原則の高速道路では、構造別に土工区間、橋梁・高架橋といった橋、トンネルに区分されている。土工区間よりも橋やトンネルの区間が5割以上を占める場合は山岳道路と呼ばれる。   コスト面では、土工が最も安価だ。このため、計画では可能な限り、土工区間にするが、わが国は山間部が多いため、トンネルが連続したり、河川を横断したりする道路や河川を跨ぐために橋が必要になってくるのが実情だ。          層厚を増して施工を省力化       土工区間には、盛り土と掘削がある。割合として多いのは、平野分の盛り土である。高速道路に加えて立体交差が基本の新幹線では、ボックスカルバートなどを用いて交差する一般道と立体交差する。   盛り土区間では、基礎掘削の後、複数の層に分けて、計画した高さまで盛り立てていく。1層の厚さは、これまで30cmを基本としてきた。現場に搬入してきた土砂をブルドーザーやバックホウで敷き均し、ロードローラーなどで転圧して締め固める。この作業を繰り返して計画した高さにする。   1層の厚さについては、45cmや60cmにする施工法も開発されている。これによって工期が短縮でき、コスト削減にもつながる。道路では新東名高速道路で採用された。   盛り土に用いる土砂は、丘陵部の区間などを掘削したものを利用する。購入する必要がなく、一方で掘削土も廃棄しなくて済む。切り盛り土工と呼び、それぞれの土量をバランスさせるのが、土工区間を計画するうえでの基本となっている。          上部を有効利用できる掘割構造       掘削する区間については、掘割構造と呼ばれている。鋼矢板などで土留めをして、支保工で支えながら計画した深さまで掘削していく。高速道路の市街地を通過する区間に採用されることが多い。施工後に上部を覆蓋すれば、多目的に利用できるといったメリットもある。   土工の施工法には、人力と機械施工とがある。かつては、人力に頼らざるを得なかったが、近年では機械化が進み、GPSや自走式の重機を用いた自動化施工も採用されるようになっている。現在でも人力施工を採用しているのは、例えば深礎杭だ。山間部の斜面に施工することが多いので、重機を使用できない。そこで、人力によって掘削していくことになる。        

2018.01.19

土工②

   掘削・埋戻し・敷均し工・締固め工          掘削             建設構造物を構築するための作業であり、既存の地盤面から施工する構造物の基礎などとなる基盤面まで掘り下げる工事であり、基本的には埋戻しを伴わない。   一方で、掘削には床掘と呼ぶ作業もあり、構造物の構築や撤去のために掘り下げるもので、埋戻しを伴う。   掘削に用いる代表的な大型機械としては、油圧ショベル、スクレーパー、クラムシェル、ブルドーザーなどがある。特殊ものとしては、高圧噴射水を利用するウォータージェット、火薬を用いる発破、化学反応を利用する静的破砕と呼ばれるものもある。   どのような重機や掘削方法を採用するかは、現場条件や土質によって使い分ける。土質は大別して土砂と岩及び石に大別される。土砂では重機による掘削が一般的だが、岩などがある場合はこれを砕くために発破や破砕方法が用いられることがある。          埋戻し             掘削して構造物の施工後に基本的には現状の地盤と同じレベルまで土砂によって回復する作業である。主な対象としては、建築構造物の基礎、橋脚の基礎やフーチング、既存の道路下を横断するために建設したボックスカルバートなどがある。構造物を施工するために掘削する施工段階、つまり設計段階から埋戻しを考慮する必要がある。   コスト削減のため、埋戻し土には掘削した土砂を仮置きして再利用するのが基本。土砂の搬出や搬入のコストが削減できるためだが、現場に仮置きするスペースがない場合は、掘削土を搬出処分して、埋戻し土を新たに購入する場合もある。   埋戻し土の土質は、現場の掘削土と同質のものにするのが基本だが、締め方効果などを考慮して砂や砕石などを用いたりする。埋戻しでは、締め固めの管理が重要になるが、機械の導入が困難な場合は、設計段階から掘削断面などを設定する。          敷均し工・締固め工             土工での敷均しと締固めは同時に行われていく。搬入してきた土砂をまず、均一の厚さに敷き均して締め固めていく。この作業の連続である。代表的ともいえるのが、道路の盛り土区間や河川堤防だ。   道路では、一回に敷き均す厚さが30cm。表面をブルドーサーなどのよって均一にしたうえで、タイヤローラーなどの転圧重機によって締め固めていく。どの程度の重さの重機によって何回転圧するか、一般道か高速道路なのか、道路種別や盛り土の高さや幅など構造によっても規定がある。   また、敷き均して締め固める1層の厚さを45cmや60cmにする施工法も開発された。施工工程の削減によって工期を短縮してコストも削減できる。新東名高速道路の建設で本格的に実用化されるようになった。施工のための重機の大型化や施工精度、施工管理手法の向上などが背景にある。        

2018.01.19

土工③

   運搬工・残土処理工・無人化施工          運搬工             土工で発生した土砂の運搬には、線土工と面土工とがある。道路や線路、堤防など線状の構造物の建設で発生したものが線土工、宅地造成など面状の施工で発生したのが面土工だ。   土砂は、掘削するとほぐされ体積が増加する。これをルーズ状態と呼ぶ。体積の増加量は土質によって異なり、国土交通省では土質別の換算値を設定している。   搬出する土砂を運搬するタイムサイクルは、工事用道路によって、道路計画が死命を決定すると言ってよいほどだ。線土工では、搬出路が周囲の道路環境に応じてほぼ決まってしまうが、面土工では、施工エリア内での運搬計画が重要になる。切り土と盛り土の土量の分配計画をもとにして、地形なども考慮した計画を作成する必要がある。   工事用道路の幅員は一般的な10t積ダンプトラックの場合で、8~9m程度。大規模土工で重ダンプなどを用いる場合は、その車幅に応じた道路幅が必要になる。安全上、3.5倍以上とされており、確保できない場合は走行速度を落とすなどして対応する。          残土処理工             土工では、切り盛り土による山岳道路や造成地などは、掘削した土砂と盛る土砂の量をバランスさせるように計画する。現場発生や残土とも呼ばれる処分が必要になる土砂の量を削減するためだ。現場内で再利用すれば資源の有効利用にもなる。   しかし、多くの建設工事の場合、処分が必要になる土砂が発生する。再利用に適さない土質であったり、かつての構造物の残骸であるコンクリートの塊、岩や石などがあったりする。新たな構造物のために基礎を構築すれば、その分の土砂も不要になる。   これらを含めて建設発生土と呼ぶ。土質によって第1種から第4種、さらに標準仕様のダンプトラックには積載できないような多くの水を含んだ泥土まで5種類に分類される。   課題は、これらの活用策だ。現場発生土は、建設副産物であり、見方を変えれば資源だ。そこで、国土交通省では、有効利用についての行動計画を作成。単独の工事内で活用するのではなく、複数の工事間でリサイクルできるシステムを作成し、処分量の削減に取り組んでいる。          無人化施工             土工の分野では、同じ作業の繰り返しによって構造物を建設するケースが多い。例えば道路の土工区間だ。一定の厚さに土砂を敷き均して、規定の回数で転圧していく。すでに、土砂を敷き均すモーターグレーダーと呼ぶ重機には、先端のブレードに自己位置計測装置を設置して高さと位置を計測して事前に入力した目標の高さなどに自動制御できるようにしたものも登場した。ブルドーザーも同様に自動で敷均し制御ができる最新機器がある。   さらに締固めについてもTS(トータル・ステーション)と位置を確認するGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて転圧回数を確認できるシステムが確立されている。   建設工事では、どのような形状に仕上げるかを出来形管理と呼ぶが、TS(トータル・ステーション)によって自動管理が可能になった。設計データを入力すれば、計測機器に自動計測されて、リアルタイムで出来形などを把握できる。これらのデータと自走式の重機を組み合わせることで無人化施工が可能になり、作業員を削減でき、施工の省力化にもなる。工期の短縮やコスト削減、過酷な労働環境の改善にもつながる。   さらに熟練の作業員に頼っていた作業が自動化されるなど、人材不足への対応を含めて、今後のさらなる技術革新が期待されている分野である。        

2018.01.11

コンクリート①

   概要          古くて新しい代表的な建設材料             建設構造物の代表的な材料であるコンクリート。 材料や基本的な製造、施工法に変化はないが、「古くて新しい材料」とも呼ばれ、改良が加えられて進化している。一方で製造や施工に不具合があれば、品質や耐久性は低下し、本来の性能を発揮できない。外的要因などによる劣化現象もある。          自由自在の形状に施工が可能  長期間にわたる強度と耐久性       コンクリートの歴史は古い。世界的に見ると、ローマ時代にまで遡ると言われている。これに対して建築物や橋などを含めて木造が主体だったわが国でコンクリートが用いられるようになったのは明治時代に入ってからである。社会資本整備が進むにつれて活用されるようになってきた。   コンクリートは、セメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砕石、砂利)を混ぜ合わせて製造する。水とセメントがペースト状になり接着剤の役割を果たして骨材を結び付けて固める。セメントペーストの強度が高いほど、コンクリートの強度も高くなり、耐久性も向上する。   最大の特徴は自由度にある。石材や木材と異なり、自由自在な形に施工できる。長期間にわたる耐久性もあり、比較的安価な建設材料でもある。   コンクリートはJIS製品である。材料や製造法、運搬、施工まで基準が定められている。これら注意すべき点はあるが、大量施工が可能で、住宅から大規模構造物まで幅広い分野で活用されている。   明治時代には、現場練りと呼ぶ方法でコンクリートを製造していた。機械などはない。材料となるセメント、水、骨材を測り、スコップなどを用いて練り混ぜた。現在に比べると水の割合は少なく、打ち込んだコンクリートは木製の棒で締め固めていた。   これに対して現在では、生コン工場で製造される「レディーミクストコンクリート」が主流になっている。生コン車と呼ばれるアジテータ―トラックで建設現場へ運搬して、施工に用いる。   施工場所へはポンプ車で圧送する。構造物の規模や形状、施工条件などによって長距離になったり、高所に圧送したりする必要がある。流動性が求められることになる。水の量を増やさずに流動性を高めるため、製造段階で添加剤を加える。これには複数の種類があり、流動性だけでなく強度など目的に応じて使い分けている。                  製造直後から性質が変化する  短時間の勝負で品質を確保する       コンクリートは生ものとも言われている。製造直後から性質が変化していく。このため製造から施工まで90分以内と定められている。セメントに水を加えると水和反応によって固まりはじめる。時間とともに固くなり、可能な限り新鮮な状態で打設をする必要がある。   打設したコンクリートは、バイブレーターで締め固め、ジャンカなどと呼ばれる不具合の発生を防ぐ。大量のコンクリートを一気にしかも確実に施工する。これによって、高品質で耐久性の高いコンクリート構造物ができる。製造過程での品質管理はもちろんだが、現場での短時間の勝負によって品質が左右されることになるのである。        

2018.01.11

コンクリート②

   材料          シンプルだがそれぞれにJISの規定が       コンクリートはシンプルな建設資材である。 材料は水、セメント、骨材、必要に応じて混和剤を混ぜ合わせる。少量であれば、鉄板を用いて、スコップで材料を混ぜるだけでできる。戸建て住宅の土間や駐車場の施工では現場で小型ミキサーを用いることもある。   しかし、本来はJISで規格が定められており、土木や建築を含めて大型構造物の建設では、認定工場が製造したものを用いる。材料そのものはシンプルだが、これにも規格があり、複数の種類がある。        構成比の約70%を占める骨材       コンクリートを構成する材料の構成比は、最も多いのが粗骨材、次いで細骨材、水、セメントの順である。仕上がった断面を見ると、粗骨材の間に細骨材が入り、さらにこれらの間を水とセメントの混ざりあったセメントペーストが埋めて強固な構造体となる。   コンクリートは、建設構造物の圧縮力を負担する。その役割を果たすのが骨材であり、容積の約70%を占める。品質がコンクリートそのものの各種の物性に及ぼす影響は大きく、使用できる骨材についてはJIS A 5005などで規定されている。   粗骨材は、一般的に呼べば砂利であり、細骨材は砂である。かつては河川敷で採取した川砂利、川砂が用いられていた。しかし、資源の枯渇や環境面への影響があり、現在では岩山を掘削して砕いた、砕石が主に用いられている。         砂利       骨材の寸法は、構造物の種類などによって異なる。また、現地で生産されるものなので地域の供給状況によって違いはあるが、最大粒径が20mm、または25mmが一般的で、40mmが用いられる場合もある。建築に比べて、大量に用いるマスコンクリートが多い土木構造物の方が、粒径が大きい傾向にある。   砕石以外でも骨材に用いられている材料がある。高炉スラグである。粗骨材は1977年、細骨材は1981年にコンクリートの材料としてJISで制定されている。鉄を製造する段階で発生する副産物であり、日本建築学会や土木学会の施工指針にも盛り込まれている。   コンクリートの耐久性に影響がある有機不純物や粘土などを含まないほか、品質のバラツキが少ないといった特性がある。天然骨材が枯渇する傾向にあることで、粗骨材の社会的なニーズも高まり、需要が増加傾向にある。          セメントは品質を左右する接着剤       コンクリート全体に占める割合は少ないが、骨材を接着する役割を果たすセメントも品質を左右する材料である。ひび割れや劣化、施工不良などを防ぐためにも構造物の条件に応じたセメントを選択する必要がある。ホームセンターでも販売されている一般的な普通ポルトランドセメントのほか、早強ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどがある。   例えば、マスコンクリートが多い土木構造物では、低熱ポルトランドセメントなどが適している。温度ひび割れ対策になるほか、長期間にわたって高い強度を発揮する。普通ポルトランドセメントに比べれば割高だが、構造物の品質を高めてライフサイクルコストを抑えることもできる。   高炉セメントやフライアッシュセメントも初期強度は小さいが長期強度は高いという特性がある。化学物質に対する抵抗性があり、コンクリートの代表的な劣化原因であるアルカリ骨材反応に対しても効果がある。高炉セメントは、水密性が向上して、塩害の原因となる塩化物イオンの侵入を抑制することから海洋構造物に用いられることが多い。          品質や施工性を高める混和剤       コンクリートの性能を改善するために用いられているのが混和剤である。 AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤などがある。コンクリートは水の割合が低いほど、品質は向上して強固になる。しかしポンプ圧送では、ある程度の流動性が必要で、いわば相反する性能が求められている。さらに、耐震性能を高める目的で鉄筋は太く、密に設計されるようになってきていることから充填性の面では、より高い流動性が必要になってくる。   これらに対して、多く用いられるのが高性能AE減水剤である。コンクリートの単位水量を減らすことができ、使用量を調整することによって性能をコントロールすることができる。   目標とする構造物の品質や施工性などを考慮して複数の混和剤を併用する場合もある。しかし性能だけを追求すると、薬の飲み合わせのように混和剤にも相性がある。大量のコンクリートを打設することが多い土木構造物では複数の工場から調達する場合もある。工場によって使用する混和剤の種類が異なれば、相性によって目的の性能を確保できないケースも出てくる。便利な材料ではあるが、あらかじめ試験練りを行うなど品質を確認する必要がある。        

2018.01.11

コンクリート③

   構造形式          進化する弱点を補う構造形式       コンクリートは圧縮に強いが、引っ張りには弱い。 この弱点を補うために鋼材と合わせて用いている。鉄筋や鉄骨に加えて、PC(プレストレスト・コンクリート)と呼ぶ構造形式も採用されているほか、繊維補強コンクリートが開発されるなど、構造体としてのコンクリートは進化し続けている。          圧縮には強いが引っ張りに弱い       コンクリートは水とセメント、細骨材と粗骨材による構造部材である。固まれば、石のように高い強度を発揮する。配合設計によって、構造物の種類などに応じて強度も調整できる。しかし叩けば割れるし、横方向からの強い力が加われば、折れてしまう。   そこで土木、建築ともに構造物として用いる場合は、鋼材と併用しているのである。RC造(鉄筋コンクリート)やSRC造(鉄筋鉄骨コンクリート)と呼ばれる構造形式だ。   RC造は、英語のReinforced-Concreteを意味する補強されたコンクリートの頭文字を略したもので、縦方向の主筋に横方向の帯筋を巻いてコンクリートと一体化する。土木構造物では主要な構造形式で、建築では中低層の建物に用いられることが多い。主に柱と梁で構成するラーメン構造と呼ぶ形式と、壁面と床版などの平面的な部材による壁式構造とがある。SRC造は中央に鉄骨を建てて周囲に鉄筋を巻く。高層建築物に用いられてきている。ただし、技術開発が進んで高強度のコンクリートを用いた超高層RC建築も開発されている。          張力を加えるPC構造       コンクリートの弱点を補うもう一つの構造形式がPC(プレストレスト・コンクリート)である。   鉄筋や鋼棒などのPC鋼材を用いる。型枠を組んだ段階で鋼材を設置して両端から引っ張り張力(プレストレスト)を加えておく。打設したコンクリートが固まった段階で、鋼材の固定を解放すれば、引っ張る力が加わり、曲げにも強くなる。RCに比べてコストはかかるが、より細く、長くできる。橋梁の桁に多く用いられてきた。支間を大きく取ることができ、建築でも大空間を確保したい場合など大規模な構造物に採用されている。   PC構造の場合は、全てを現場で施工するほかに工場製作の部材を用いることもある。分割した部材を工場で製作して現場でPC鋼材によって接合して一体化する。PC(プレキャスト・コンクリート)と呼び、建築では区別するためにPCaと言うこともある。管理された工場で製作するので、品質や強度が一定している。現場では部材を接合するだけなので、工期も短縮できるといったメリットがある。   しかし高い強度のPCでも橋桁に用いた場合には支間に限界がある。そこで、開発されたのが、複合橋や混合橋桁だ。PC部材の一部に鋼材を用いて、より長い支間や軽量化を実現した。波型鋼板ウェブPC橋や複合トラス橋などがある。   さらに、従来のPC箱桁橋は、幅13m程度が限界であったが、解析技術の進歩などによって、より広い幅員が可能な箱桁合理化床版構造と呼ぶ形式も開発されている。          繊維を混ぜ合わせた新世代のコンクリート       コンクリート補強用プラスチック繊維                     出典:大日製罐(株)       鋼材を用いずにコンクリートの弱点を補うのが繊維補強コンクリートである。RCとSRC、PCに次ぐ新たな世代のコンクリート構造体でもある。引っ張り力が弱いのに加えて、コンクリートは荷重などの外力によって変形し、ひび割れが発生する。水分などが浸透して内部の鉄筋を腐食させたりすることがある。これに対して繊維補強コンクリートは内部に鉄筋などの鋼材はない。   原理は、戸建て住宅などに古くから用いられてきた土壁に似ている。土だけでは脆いが、細かく裁断した藁を混ぜ合わせることで、強度を高める。繊維補強コンクリートも鋼や炭素、ポリエチレンなどの繊維を混ぜ合わせる。内部で絡まった繊維が引っ張り力に対抗し、曲げにも強くなる。   種類や配合の割合は、構造物の種類や求める強度などによって決める。例えば、RC造に比べれば、鉄筋を組むといった現場作業は削減できる。しかし、材料としてのコンクリートのコストアップは避けられない。部材断面の縮小や軽量化、コンパクトが可能になれば、施工の省力化と合わせたトータルコストの削減につながる可能性もある。   さらに、超高強度繊維補強コンクリートも開発されている。軽量化やコンパクト化に加えて建設時のCO2排出量は少なく、耐久性も高い。普及しない大きな要因は、やはりコストにある。管理された工場で部材を製作し、製造工程には厳密な管理が求められるなど手間が掛かる。これらを改良し、特性をアピールしていくことが普及のかぎを握っているといえよう。        

2018.01.11

コンクリート④

   劣化現象          施工による不具合と劣化現象       コンクリートは丈夫で耐久性があり、しかも自由な形状にできる。多くの構造物に用いられてきている代表的な建設材料である。   しかし、施工に不具合があれば性能は低下する。建設地の環境などによって劣化することがある。       主要な劣化の種類と要因                             出典:農林水産省          締め固め不良によるジャンカやあばた       コンクリートの劣化について、ここでは施工段階で発生するものと施工後に発生するものとに大別する。   施工段階での不具合としては、ジャンカ、あばた、コールドジョイント、温度ひび割れなどがある。       ジャンカ・豆板        あばた             コールドジョイント                                      出典:国土交通省       均一に混ぜ合わせた水、セメント、骨材によるコンクリートを現場で型枠に流し、バイブレーターで締め固める。これが不十分なことによって発生する代表的な不具合がジャンカである。型枠内部のコンクリート表面に筋状の隙間のような不良個所が発生する。   さらに、かつて社会問題となった加水で発生することもあった。コンクリートに水を加えれば流動性が高まり、施工を容易になるといった勘違いによる不正行為である。多くの場合は、運搬するアジテータトラックに注水する。搭載してある洗浄用のタンクの水を用いるので量に限りがある。この程度で水セメント比が変わり、流動性が向上することはまずない。むしろ、運搬途中に加えたので、十分に材料の練り混ぜが出来ず、材料分離によるジャンカが発生する。専門家の間では「加水は百害あって一利なし」と言われている。   あばたも、締め固めに原因がある。表面に近い部分を集中的に締め固めると発生する気泡である。   コンクリート構造物は、大きくなるほど一気に打設はできない。複数にわたって打ち重ねることになる。この時間が長くなれば、下の層は固まり上の層と一体化しない。これによって発生するのがコールドジョイントである。   打設後に発生する代表的な不具合が温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れである。コンクリートは固まる段階で熱を発生する。セメントが水和反応によって強度を発生する段階に生じるのが水和熱である。蓄積された熱が放熱されることによってコンクリートが収縮して発生するのが温度ひび割れ。硬化したコンクリートが乾燥した環境によって自然に縮むことよって発生するのが乾燥収縮ひび割れである。対策としては、低発熱セメントを用いたり水セメント比を調整するなどの方法のほか、誘発目地を設けるといった対策もある。          完成後に進行する三大損傷   完成したコンクリート構造物の代表的な劣化現象に中性化、塩害、アルカリ骨材反応の三大損傷と呼ばれるものがある。コンクリートが劣化することによって内部の鉄筋が腐食することが引き金となって発生する不具合である。   コンクリートは強いアルカリ性であり、これによって内部の鉄筋は不動態被膜に覆われて腐食から保護されている。しかし、年とともに大気中の二酸化炭素とセメントに含まれている水酸化カルシウムが反応して、構造物の表面から中性化していく。鉄筋にまで達すれば、不動態被膜が破壊されて鉄筋は腐食する。これが中性化による劣化現象だ。コンクリート表面から鉄筋までの被りを厚くするほか、表面に保護材料を塗るなどして進行を防ぐ対策などがある。   建設地の環境の影響を受ける劣化現象が塩害である。沿岸部のコンクリート構造物では飛来してきた塩分によって鉄筋が腐食する。塩化物イオンが構造物内部に徐々に浸透して鉄筋の不動態被膜が破壊される。特に、わが国では主要な国道や高速道路、鉄道などが沿岸部を走っており、各地で発生している。また、内陸部でも発生する。路面の凍結防止剤によるものである。解けた水とともに流れて床版などを腐食させる。進行するとコンクリート表面が剥離したり、断面欠損が発生する。これらを補修する工法や材料は数多く開発されており、各地で採用されている。   塩化物イオンから鉄筋の腐食を防ぐ方法としては電気防食と呼ばれるものがあり、補修と併用されることが多い。材料が原因で塩害が発生することもある。骨材への海砂の使用だ。洗浄が不十分であれば、塩分が残ってしまう。かつて、山陽新幹線の高架橋からコンクリート片が落下する事故が多発し、海砂の使用が原因ではないかと指摘された。1987年からは、コンクリートの受け入れ時に塩化物量の測定を実施する対策が取られるようになっている。   アルカリ骨材反応も材料が影響する。コンクリート用骨材に用いられる安山岩や玄武岩に含まれる反応性のシリカ鉱物がゲル状になり、水を吸って膨張して、ひび割れを発生させる。石川県の能登有料道路では、鉄筋が破断した事例が報告された。アルカリ骨材反応で鉄筋が破断することはないと思われており、土木学会では、直ちに委員会を設置して調査した。ただし、反応性の骨材であっても水分の供給がなければ発生しないなどアルカリ骨材反応は複数の要因が重なることによって起こる。   新設時の対策としてはコンクリートのアルカリの総量規制、抑制効果のある混合セメントの使用、試験で安全性を確認した骨材の採用がある。これらの対策が実施されるようになった1987年以降に建設された構造物では、発生が大幅に減少している。これ以前の構造物では徐々に進行していることもある。反応性骨材は西日本に多い。このため、東日本では劣化の原因がアルカリ骨材反応とは気が付かないケースがあるのではないか、との指摘もある。        

2018.01.11

仮設工①

   概要       施工する構造物の種類や規模の大小を問わず必須のものであり、最初に着手する仮設工。仮囲いのほか、地中の土留めや地上の支保工など種類が多く、範囲も幅広い。「段取り八分」と言われるように仮設が工事の安全や施工性を左右すると言っても過言ではない。       土留め工                    仮桟橋工                  出典:国土交通省          発注者の受け取り対象外  原則として受注者が計画する       構造物の施工で対象となるものは、工事目的物と仮設物に大別される。このうち、工事目的物は、施工する構造物そのものであり、発注者受け取り対象物である。発注者側が設計図を作成し、仕様などが詳細に決められている。   これに対して仮設物は、最終的に発注者の受け取り対象外である。土木工事請負契約書第1条第3項では、「仮設、施工方法その他工事目的物を完成させるための一切の手段については、契約書及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者が責任において定める」と規定。原則として受注者が、その裁量によって計画し施工する。任意仮設と呼ばれるものだ。   一方で指定仮設と呼ぶものもある。工事中の公衆災害や重大な労働災害を防止するため、特に留意する必要がある仮設物が対象となっている。例えば河川堤防と同等の機能がある仮締め切り、一般車両が通行することになる仮設道路、特許工法や特殊工法を採用する場合のほか、関係官公署との協議などによって施工に制約がある場合、第三者に特に配慮する必要がある場合などだ。このほか、他の工事に使用するため、完成後に残しておく必要があるものも対象となる。   指定仮設は、設計図書などで発注者が具体的に指定し、施工方法などを変更する場合は、発注者の指示や承諾が必要になる。施工方法の変更があった場合には、設計変更の対象ともなる。これに対して任意仮設については、発注者が設計図書などで指定しないほか、施工方法などの変更も受注者が任意でできる。   仮設工は、分類方法にもよるが、主なものだけで15種類前後ある。仮囲いのように建設現場で誰もが見かけるものもあれば、特殊であったり、大掛かりなものもある。発注者の受け取り対象外なので、完成後は撤去するのが原則である。安全性や施工性を確保するためには周到な計画が必要だが、工事全体の採算面から見れば可能な限りコストを削減したいという一面も持ち合わせていると言えよう。        

2018.01.11

仮設工②

   土留め・止水壁          地下構造物の施工では本体を兼ねる場合も       建設構造物には地下空間を利用したものが数多くある。ビルの地下階やターミナルを中心にした地下街、ライフラインでは上下水道管とそれぞれの処理施設、地下鉄、道路のほか、雨水貯留施設や地下タンクなどもある。   地下鉄の駅間はシールド工法で施工されることが多いが、規模が大きく、地上との連絡施設が必要となる駅部は開削工法で施工される。道路では市街地周辺で騒音などを避け、景観を阻害しない半地下式の掘割構造区間がある。   浅くて規模が小さな上下水道の枝管と呼ばれるものは、素掘りによって施工される。埋設するために掘削する壁面の両側にある程度の角度を設けて、崩れるのを防ぐ。しかし構造物の規模が大きく、深さを増せば、仮設工としての土留めが必要になる。          施工が容易で再利用できる鋼矢板       最も多く用いられているのが鋼矢板である。断面がコの字型で両端には半円形の継手部がある。打ち込んだ矢板の継手を噛み合わせることで連続した地中壁にする。大掛かりな施工設備の必要がなく、急速施工が可能なので仮設工事の期間が短縮できる。   しかも深さや地盤の種類に応じて複数の種類があり、合理的で経済的な設計が可能だ。例えば長さは一般的なものが4~20m。矢板に掛かる土圧など必要な強度に応じて部材の厚みを選択できる。深い場合には、水平方向の部材であるH型鋼の切梁を設置して補強する。本体工事の施工完了後は、引き抜いて再利用できる。       鋼矢板搬入                      鋼矢板による締切工の施工状況               出典:国土交通省          止水の役割も果たす連続地中壁       さらに規模が大きな地下構造物の施工には、連続地中壁を採用する。柱列式や等厚式などがあり、施工法についても建設各社によって複数の工法が開発されている。土留めのほか、止水壁としての役割も果たす。   鋼矢板と異なり、施工には大掛かりな機械設備が必要になる。柱列式の場合は、平面的に見ると杭を重ね合わせるように施工して連続した壁にする。削孔して鉄筋を建て込み、コンクリートを打つ。必要とされる強度や深さに応じて杭径などを決める。   土留めや止水のほか耐震性能もある。このため、本体構造物の地下が外壁や基礎の一部と利用されることも多い。        

2018.01.11

仮設工③

   手摺先行工法          重大災害となる墜落落下を予防する             地上に建設構造物を施工するための仮設工は、簡易で規模が小さなものから大規模はものまで、まさに多岐にわたる。山間部の道路や鉄道、ダムの建設では現場への進入路となる仮設道路がある。現場内では、土砂や資材置き場となる仮設ヤードが設けられ、軟弱地盤で車両の走行に影響がある場合は、敷鉄板を設置する。さらに現場の周囲は仮囲いで覆う。   橋脚などの施工には、足場を設置し、上部工では支保工を用いる。コンクリート構造物の施工で不可欠な共通部材として型枠などがある。   土木、建築を問わず建設構造物に不可欠な足場には、枠組み足場、単管足場、吊り足場や張り出し足場など複数の種類がある。組み立ては、鳶職が担当し、吊り足場や張り出し足場、さらに高さ5m以上の組み立てと解体には技能工種を終了した作業主任者が必要になる。   建設業の死亡災害の4割を占める墜落・落下事故の多くは足場からのものであり、厚生労働省では、防止するために手摺先行工法を推奨している。足場の最上層の作業床を設置する前に1層下の作業床から、まず手摺を先行して設置するものだ。   この工法に対応するために用いられることの多いのがシステム足場と呼ばれるものだ。柱となる支柱や梁部材となる単管パイプ、これらの接合部材、足場板、階段などの部材によって構成される。施工する構造物の大きさに応じて任意な形状や高さにでき、組み立てや解体も容易だ。部材は再利用され、リースを利用するケースがほとんどである。   橋梁の上部工などを施工するための支保工には、大別して固定式と移動式とがある。固定式は小型の部材を組み合わせるので、施工に大型の重機などが必要ない。一方の移動式は、1径間分の橋桁を施工する型枠と支保工との役割を果たす。支保工内に設置した設備を利用して施工するので作業環境が良好になり、繰り返しの作業となるので工程管理もしやすく、品質も安定する。径間数が多く等間隔の場合に用いられる。   コンクリートを打設する型枠一つをとっても種類が多い。構造物の規模の大小を問わず用いられてきたのが合板型枠である。厚手のべニア板を使用し、構造物の形状に応じて任意にしかも容易に加工できる。一方で、型枠材としてリユースやリサイクルができない。産業廃棄物になるといったデメリットがある。   そこで、アルミニウムや合成樹脂による再生率の高い型枠が開発されるようになった。高い圧力の掛かる大型の構造物には鋼製型枠が採用される。   また、化粧型枠と呼ばれるものもある。合板や鉄など素材による分類ではなく、施工したコンクリート表面に模様を付けるためのものである。擁壁や河川の護岸などに採用される。素材は、再利用できるウレタンフォームや金型で加工された鋼板などがある。        

2018.01.11

仮設工④

   海洋工事          大規模、複雑化する海洋工事の安全性向上へ  国土交通省が仮設工の検討委員会を設置                 建設業には、専門性の高い海洋土木と呼ぶ分野がある。港湾施設を中心に護岸や防波堤の建設、埋め立て、浚渫、橋梁の基礎、海底トンネルの建設などを行う。仮設工も陸上部とは異なり、大規模になる場合が多い。   そこで国土交通省では、2014年に「港湾工事における大規模仮設工等に関する技術検討委員会」を設置して、マニュアルの作成に取り組んできた。港湾工事では、構造物の大型化や施工効率化に対応するため、大規模で複雑な仮設を伴う工事が増加している。厳しい気象、海象条件や複雑な地盤条件に対応しなければならないケースも多い。   対象は港湾施設に加え、人工島、海底トンネルなど広範囲に及ぶ。これらの工事の安全性を確保するため、汎用性の知見や技術の蓄積を図るのが委員会の目的である。2017年3月には、検討結果を「港湾工事における大規模仮設等の安全性向上に向けた設計・施工ガイドライン」としてまとめた。これらの内容は「港湾の施設の技術上の基準」や「港湾工事共通仕様書」に反映していく方針である。          水を遮断してドライな状態にする                 海洋土木は水との闘いでもある。河川工事も同様である。代表的な仮設工が仮締め切りだ。水を遮断しドライな状態にして本体構造物を施工する。仮設なのでコスト削減が求められるが、水深が深いほど工事は複雑になる。浅い場合は、止水性能のある鋼矢板を用いたり、土砂による止水壁を設けたりする。大規模な河川工事の場合は、別の水路を施工して、川の流れを迂回させる。仮水路は堤防を併用することが多い。   仮締め切りは、既設の堤防と同等以上の治水安全性がある構造にしなければならない。特に河川の出水期では、鋼矢板による二重式締め切りが原則となっている。土堤の場合は、のり面を被覆するなど十分な補強が必要になる。いずれも既設の堤防の高さ以上にするよう定められている。        

2017.12.21

ダム

   治水や利水、発電を目的にした最大級の土木構造物               土木構造物で最大級の規模を誇るダム。 治水や利水、発電といった本来の目的に加えて、観光名所にもなっている。   大規模で自然環境が相手であり、ダム湖によって水没する地域もある。調査から地元交渉、計画・設計、建設を含めると数十年掛かるケースが大半の一大事業である。この間にダムに求められる需要が変化し、これ以上ダムは必要ないといった「脱ダム」宣言によって、事業が中断したり見直されたダムもある。 しかし洪水を防ぎ、水資源を供給するなど、ダムは不可欠な土木構造物でもある。          約3,000ある日本のダム       国内で建設されるダムの目的は多岐にわたる。主なものは、洪水を防ぐ治水、水道用水などを確保する利水、さらに発電である。単独の目的によって建設されるダムもあれば、多目的のものもある。多くは誰が建設するか。事業者によって大別される。   現在、国内で定められているダムの定義は、1964年に改訂された河川法と1976年に制定された河川管理施設等構造令を根拠としている。河川の水を貯留し、取水するためのものであり、基礎から堤頂までの高さが15m以上のものだ。これ以下の高さのものは堰と呼ばれ、区別されている。ダム建設の歴史は古く、616年に完成した大阪府の狭山池ダムが最初であり、統計によって異なるが国内には約3,000のダムがある。         大阪狭山池       このうち、現在の定義によって建設されたダムで最も多いのが、国土交通省が所管する多目的ダムである。洪水を防ぐ治水、水道用水や工業用水を供給する利水、加えて発電など複数の役割を果たすことから多目的ダムと呼ばれている。国が直接建設するのが特定多目的ダム、別名直ダムと呼び、国の補助を受けて地方自治体が建設するものを補助多目的ダムと呼んでいる。   特定の目的としたものとして、農林水産省が所管する農業用のダムがある。文字通り農業用水を確保するためのものだ。さらに利水目的では、独立行政法人水資源機構が建設・管理をしている。   これらの公共施設のダムに対して民間が建設しているのが、国内の電力各社による発電用のダムである。鉄道事業者が電力確保のために自前で建設したダムもある。   官民を含め、治水・利水両面にわたって機能を発揮しているダムだが、風当りも強い。必ずと言っていいほど地元では反対運動が起こる。ダム湖によって地域が水没して、住民にとっては、故郷が消える。地元との交渉が膠着化して20年から30年も経過し、事業が凍結状態になったダムもある。また2001年には、当時の長野県知事がこれ以上ダムは必要ないと「脱ダム」宣言をして県内のダム事業は中断された。   長期間にわたる事業なだけに計画時との需要の変化、事業者の財政難、環境面から見直されたり、中断したダムもある。しかし各地で相次ぐ集中豪雨、その一方で渇水など地球温暖化の影響とも言われる気象災害によって、ダムには再評価されてきている一面もある。          材料によって大別される二つの形式       目的を問わず、ダムには複数の形式、構造がある。 大別すると土砂や岩石を積み上げたフィルダムとコンクリートダムとがある。さらに細分化され、どの形式にするかは、建設地の地形や地質条件などによって決められる。       フィルダム                  摺上川ダム(東北地方整備局)                   出典:国土交通省       フィルダムには、アースダムとロックフィルダムがある。土を台形状の断面に盛り上げたのがアースダム。砂利や岩石などを用いたのがロックフィルダムだ。中心部にはコアと呼ぶ土による遮水層を設ける。   コンクリートダムには、重力式、アーチ式など主に6種類の構造形式がある。自重と重力を利用して水圧に耐えるのが重力式、両岸の強固な岩盤で支えるのがアーチ式だ。代表例が黒四と呼ばれている関西電力の黒部ダムである。堤高が186mあり、国内で最も高い。また日本で開発された最も新しいダム形式に台形CSGダムと呼ばれるものがある。断面を台形状に盛り立てたコンクリートダムの一種だが、従来の構造形式とは区分されている。異なるのが材料である。コンクリートダムは、水とセメント、建設地の近くに確保した原石山から採取した骨材を用いる。これに対して、CSG(Cemented Sand and Gravel)は直訳するとセメントで固めた砂礫である。原石山で採取できる骨材だけでなく、従来は用いることがなかった砂礫をも材料にすることで、材料を合理化しコストも削減できる。建設現場周辺で良質な材料を確保できなくても建設を可能にした。       重力式コンクリートダム            小山ダム(茨城県)                   出典:国土交通省       アーチダム                  青蓮寺ダム(水資源機構)                   出典:国土交通省       施工法も進化している。代表例がRCD工法である。コンクリートダムの合理化施工工法として日本で開発された。   従来は、多くのコンクリート構造物と同様に型枠を組んで流動性のあるコンクリートを流し込んで締め固めていた。これに対して水とセメント量を少なくした超硬練りのコンクリートを用いる。見た目は「バサバサ」の状態だ。現地のプラントで製造したコンクリートは、ダンプトラックで運搬し、ブルドーザーで敷き均して振動ローラーで締め固める。汎用の重機で施工でき、従来のようにブロックに分割する必要がなく、連続施工ができる。大量打設が可能であり、工期の短縮、工費の削減を可能にした工法である。   ダムは最大級の土木構造物であり、その規模は高さを表す堤高、天端部の長さである堤頂長、そして堤体積が指標となる。国内で最も高いのは黒部ダム、堤頂長が最長なのが新潟県の大谷内ダムで1,780mある。堤体積は滋賀県の丹生ダムの1,190万m3が最大である。        

2017.12.21

橋梁

   維持管理の重要性が増す社会資本の代表例               川を渡り、道路や鉄道をまたぎ、海をも越える。橋梁は、人、車、列車が移動するうえでの主要な構造物だ。単独では橋梁と呼ばれるが、連続すれば高架橋となる。高速道路や新幹線などだ。構造や形式もさまざまで、用いられる材料も異なる。老朽化が進み、維持管理の重要性が増している社会資本の代表例でもある。          国や自治体管理を含め全国に72万橋       国内には約72万の橋梁がある。交通量など需要に応じた規模、建設地の気象条件や地盤、さらに景観性なども考慮して建設された。橋梁は、地域のシンボルとなることもあり、構造物としての強さや耐久性だけでなく、周辺環境との調和などデザイン性も重視されている。       橋梁を構成する構造の名称                                出典:国土交通省       形式が異なっても基本構成は共通で下部構造と上部構造とがある。下部構造は、橋梁の両端にあるのが橋台(アバット)。その間で上部構造である桁を支えるのが橋脚(ピアー)で、長さや形式などによって数は異なる。詳細な規定はあるが、大まかに言えば、橋台との間の長さが橋長、橋台や橋脚の間を径間長と呼ぶ。   一方の上部工は大きく分けて7種類。これが橋梁の名称ともなっている。桁橋、床版橋、トラス橋、ラーメン橋、アーチ橋、斜張橋、吊橋だ。材料は主に鋼材とコンクリートを形式に応じて使い分ける。そこで、鋼橋やコンクリート橋とも呼ばれる。   形式別に概説すると、まず桁橋は下部構造である橋台や橋脚の間に鋼製やコンクリート製の桁を渡して構成する。最も古くからある一般的な形式だ。桁の断面形状によってI桁、T桁、箱桁がある。       桁橋     I桁の橋          T桁の橋           箱桁の橋                                                  出典:国土交通省       床版橋は、桁を用いずにスラブと呼ぶ版を主構造にしたものだ。主にPC(プレストレスト・コンクリート)で桁を構成する。       床版橋   PCポステン中空床版橋          PCプレテン床版橋                                                   出典:国土交通省       ラーメン橋は、ドイツ語のrahmen(枠)が名称の由来で、橋桁と主構造の桁が一体になったものだ。鋼製のほか、PCもある。大きな荷重が掛かって変形しても落橋することがなく、橋脚と桁の接合部である支承がないため、上部構造がずれ落ちたりせず耐震性が高い。       ラーメン橋     鋼方杖ラーメン橋       PCラーメン箱桁橋                                                                             出典:国土交通省       「鉄橋だ ♪ 鉄橋だ ♪ 」の歌のモデルとも言えるのがトラス橋だ。道路のほか、鉄道で多く用いられてきた構造形式である。建築用語のtruss(トラス)が語源。棒状の部材を三角形に組み合わせて上部構造を構成する。古くは木材、近年では鋼材が用いられ、斜めに組み合わされた斜材には引っ張りと圧縮力が掛かり、この組み合わせによって桁を支える。       トラス橋   ゲルバー鋼トラス橋(下路式)       鋼トラス橋(下路式)                                                      出典:国土交通省       桁の上部や下部にアーチを描く、弧によって構成されるのがアーチ橋である。コンクリートや鋼材のほか、かつては木、石なども用いられた。橋台の間に橋脚を設置することが困難な渓谷などに採用されることが多い。       アーチ橋   鋼ランガーアーチ橋(上路式)       鋼ローゼアーチ橋(下路式)                                                    出典:国土交通省          長大橋の建設を可能にした関連技術       橋脚の上に建てた主塔から斜めに張り出したケーブルによって桁を支えるのが、斜張橋である。吊り橋の一種で、優美な姿であることから景観を重視する地域などに採用されることが多い。       斜張橋                                                   出典:国土交通省       2本の主塔の間に張り渡したケーブルによって主構造である桁を支えるのが吊り橋である。橋の両端にある橋台に相当するアンカーレイジは、自重と摩擦力によって、ケーブルの引っ張り力に抵抗する。中央部に橋脚が設置できない海峡部など長大橋に採用されることが多い。世界最長の吊り橋は、本四架橋の明石海峡大橋。全長が3,911mで、主塔間の中央支間長は1,991mある。       吊橋                                                   出典:国土交通省     橋梁の長さは全体の長さではなく、橋脚間の長さで評価される。高架橋のように支間長の短い橋を連続させれば、長い橋梁はむしろ容易につくることができる。   これに対して、支間長の橋梁を建設するには高度の技術が必要になる。明石海峡大橋の場合も当初は道路と鉄道の橋だった。計画変更によって道路専用橋になったが、それでも2,000m近い支間長をケーブルで支えられないという課題が発生した。ケーブルの自重だけで、この長さは限界であり、桁を吊り下げる余裕がない。そこで開発されたのが、高張力鋼だった。世界最長の吊り橋は、建設技術の進歩だけでなく、これらの関連技術にも支えられている。   一足先に開通した同じ本四架橋の南北備讃瀬戸大橋でも基礎工事で建設技術以外の課題があった。掘削した橋脚の基礎岩盤は目視で確認することになっていた。   しかし、当時は急潮流で大深度の潜水技術はなかったのである。そこで、潜水ボンベ内に注入する気体の種類を調整するなどして、大水深での長時間潜水が可能な技術を開発した。明石海峡大橋と同様に関連技術の進歩が長大橋の建設を可能にしたエピソードの一つである。          7割以上を市町村が管理する       橋梁にとって最大の課題になっているのが老朽化である。リニューアルの目安とされる建設から50年を経過したものが、今後急速に増大していく。新聞やテレビのニュースでも再三にわたって取り上げられ、鋼製のトラス橋では主要部材である鋼材が破断していたり、コンクリート橋では表面が剥がれたりして落下するなどの事例も続発した。   国土交通省では、2014年7月から道路管理者は、5年に1度の割合で、近接目視によって点検し、結果を4段階に分けて健全化の診断をする方針を打ち出している。しかし、年度末までの実施率は、約28%に過ぎない。   点検を実施した橋梁のうち、緊急または早急に補修が必要なものは、国が管理する橋梁は全体の約8%、548橋だったのに対して、市町村が管理するものは約10%、9,550橋もあった。   かつて、橋梁の維持管理が後回しになっていることが問題になった米国では、約61万橋のうち国が管理するのが約50%。これに対してわが国では、国や高速道路会社が管理するものはわずか8%で、市町村の管理が70%以上を占め、財政難や技術者不足が大きな課題となっている。                                         

2017.12.21

トンネル

   国民生活を陰で支える社会資本                 トンネル内の附属物ほか         出典:国土交通省       道路、鉄道、上下水道など多くの社会資本を支えているトンネル。 山岳部や都市の地下、さらには海峡をくぐるなど、施工場所、工法ともに数多くある。長大で巨大なものもあるが、地上からはその全容を見ることはできない。では、トンネルにはどのような種類があり、どう施工しているのか。         黒部ダムのトンネル       立山黒部アルペンルート。 長野県の信濃大町から富山県の立山までトロリーバスやケーブルカー、ロープウェイなどを乗り継いでアルプスを越える国内屈指とも言える人気の観光ルートである。ハイライトの一つが黒部川第四発電所、黒四ダムだ。長野県の扇沢からダムまでトンネルをトロリーバスで向かう。   関電トンネルとも呼ばれ、ダム建設のための資機材などの運搬ルートだった。黒四ダム建設での屈指の難工事で、途中には中央構造線(断層破砕帯)があり、その建設の苦闘ぶりは映画「黒部の太陽」となった。この映画を見て土木技術者を目指したという建設関係者が多くいた。   トンネルは完成すれば、外部から見えるのは坑口だけ。下水道にいたってはマンホールだけだ、と工事関係者は苦笑する。しかし破砕帯や熱水帯を抜け、青函トンネルのように海底を潜ったり、都市の大深度を掘り進んだりした大断面のトンネルなど、多くの難工事が展開されてきた。          地形や地質に応じた多彩な工法       トンネルは、施工場所や施工法によって複数の種類がある。道路や鉄道を建設するために山を貫くのが山岳トンネル、地下鉄や増加傾向にある都市高速の地下トンネル、下水道の管渠、さらには河川や湾岸部の底に道路などを建設するためにボックスカルバートを埋設する沈埋トンネルなどがある。   トンネルと聞いて多くの人がまず思い浮かべるのが山を貫く山岳トンネルだろう。日本最長の狭軌鉄道の山岳トンネルはJRの北陸トンネルで、長さが13.87kmある。   かつて、山岳トンネルは矢板工法によって施工されていた。土質に応じて人力や機械、発破によって掘削し、その壁面の崩壊を防ぐために矢板と呼ぶ木材や鉄板などによる支保工で支えて、コンクリートを巻き立てていく。土質が悪く崩壊の可能性がある地山では、トンネルの全断面に対して底部の両側に小さな掘削孔を先行させて水抜きや地質の確認をする側壁導坑先進工法、底設導坑先進工法、上部半断面先進工法などを使い分けた。在来工法とも呼ばれている。   これに代わって採用されるようになったのが、NATM(ナトム:New Austrian Tunneling Method)だ。掘削した壁面に直ちにコンクリートを吹き付けて固め、ロックボルトと呼ぶ鋼材をトンネル断面に対して扇状に打ち込み、その相互効果によって崩壊を防ぐ。地質に応じてボルトを打ち込む深さや数は変える。名前の通りオーストリアで開発された工法で、岩盤が多い現地とは異なり軟弱地盤や湧水が多い日本では採用が難しい面もあったが、改良や工夫を重ねるなどして1980年代から山岳トンネルの主流工法となっている。          大断面大深度化に対応してきたシールド工法       シールド工法のイメージ             シールドマシン                  出典:国土交通省       地下鉄や高速道路など都市部のトンネルの施工に採用されているのがシールド工法だ。トンネルを建設する起点と終点に発進と到達の二つの縦穴を掘削し、発信側から先端が回転するカッターヘッドがついたシールドマシンで全断面掘削していく。後方では、鋼製やコンクリート製のセグメントを組み立てて円形のトンネルを形成する。大別して泥水式と泥土圧式とがある。   軟弱な土質や水の多い滞水層でも容易に施工できるのが泥水式だ。掘削していくカッターヘッドの切り羽と呼ぶ全面の土圧に応じて泥水を加圧・送水することで安定させ、掘削した土砂は水とともに流体で地上に搬出する。高い水圧の地盤でも施工可能で、長距離掘進にも適している。   泥土圧式シールドは、巨礫など岩の塊があっても施工できる。掘削した土量と排出する土量のバランスを図りながら掘り進んでいく。アーキュレート装置とよぶ機構によって急曲線の施工も可能で、長距離掘進も可能だ。いずれも直径10m以上の大断面や長距離掘削の可能な技術開発が進み、地下鉄のほか首都高速中央環状線などの道路建設にも採用されている。   一方、異なる施工法によって建設されるのが沈埋トンネルだ。掘削して掘り進んでいくことはしない。河川や海峡を横断する道路などの建設に採用されている。あらかじめ水底をルートに沿って溝状に掘っておき、地上で製作した沈埋函(ボックスカルバート)を沈め、これを接続してトンネルにする。東京湾周辺の首都高速道路の建設で多く採用された。       沈埋工法                      出典:国土交通省       さらに開削工法によって施工されるトンネルもある。 地表から土留めをして掘削し、トンネル構造物を築いて埋め戻す。オープンカット工法とも呼ばれる。地下鉄では、駅間をシールド工法で施工し、大規模な構造物となる駅部分の多くは、開削工法によって建設されてきた。          自然条件の克服へ進化してきた技術       「黒部の太陽」のように、わが国のトンネル建設は自然との闘いでもあった。破砕帯や湧水、火山地帯が多いので熱水帯を掘り進めることもあった。地質は随時変化し、貫通までに10年以上掛かった鉄道トンネルもある。これらに対応するため、多くの補助工法が開発されてきた。一つがパイプルーフ工法だ。鋼管を施工するトンネルの外周に沿って打ち込み、ルーフ(屋根)や壁を作ったうえで、掘削していく。これによって崩壊を防ぎ、作業の安全性を確保する。   軟弱地盤に対しては、凍結工法や薬液注入工法などがある。 凍結工法は、文字通り掘削する地盤に凍結剤を注入して冷やして固める。 薬液注入工法は、セメントミルクなどを圧入して地盤の強度を高めることで崩壊を防ぐ工法だ。過酷で複雑な自然条件に対応するため、施工法や技術は絶えず進化をし続けてきている。        

2017.12.21

空港

     災害発生時には救急、支援物資輸送の拠点として機能する               空港は旅客ターミナルビル、庁舎、管制塔、滑走路、エプロン、格納庫、整備施設など土木建築を含めた複数の施設で構成される、いわば複合施設である。   国内の主要空港の多くは沿岸部にあり、地震が発生すれば、それぞれの施設は液状化や津波の影響を受ける可能性がある。   一方で、空港は災害発生時に緊急救命活動や救援物資輸送の拠点となる。災害に強い空港にするため、各空港では整備、拡張などを進めると同時に災害対策に取り組んできた。   2004年に発生した新潟中越地震では、新潟空港が被災地支援に大きな役割を果たした。上越新幹線は2ヵ月にわたって運休し、北陸自動車道や関越自動車道は緊急車両以外が通行止めとなる区間が発生した。これに対して新潟空港は、救急や物資の輸送に加えて、JALとANAによって羽田との臨時便が運航され、約21万人が利用し、寸断された鉄道や道路を補完した。   全国の他の空港でも同様の機能が維持できるよう国土交通省では、地震と津波に強い空港のあり方についての検討委員会を設置し、検討を重ねると同時に対策工事を実施してきた。   地震については、発生後極めて早期の段階に救急救命活動の拠点となり、3日以内には緊急物資、人員輸送の受け入れが可能になることを目指している。長さ2,000m程度の滑走路があり自衛隊機による大量輸送が可能な空港では、そのための施設の耐震性を確保する。これ以外の空港ではヘリコプターや小型機などによる輸送が可能なようにする。   津波については、東日本大震災の教訓を踏まえて、空港ごとに人命を守るための津波避難計画、機能を復旧するための津波早期復旧計画の策定を柱とした対策を実施している。首都直下型や南海トラフ巨大地震などが発生すると、羽田、中部、関西など7空港が津波による浸水被害が発生すると予測されている。   高知と宮崎空港では、施設の半分以上が浸水する可能性がある。被害を防ぐため、それぞれの計画についての策定が進んでいる。   同時に液状化対策工事を実施してきた。非液状化層の深さまで地盤改良を行い、滑走路の損壊を防止する。   仙台空港では、東日本大震災で津波に見舞われたが、液状化対策工事を実施していたので滑走路の機能は維持され、被災後の早期使用が可能になったのである。       仙台空港の液状化対策工法(一例)                    出典:国土交通省       仙台空港では液状化対策を実施していなかった箇所は被災した     誘導路                     エプロン                           出典:国土交通省             オリンピックに向けて首都圏の空港機能を強化する       首都圏の空港では2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて機能の強化が進んでいる。   羽田空港は、飛行経路の見直しなどによって空港処理能力を3万9,000回に拡大する。必要となる空港保安施設、誘導路などの整備。さらに駐機場や国際線と国内線地区を結ぶトンネル、空港アクセス道路の改良、川崎市と空港とを結ぶ連絡道路を整備していく。   成田空港では、高速離脱誘導路などの整備によって処理能力を約4万回に拡大する計画である。第3滑走路の整備など、さらなる機能強化にも取り組んでいく。すでに実施している庁舎の耐震化に加えて、ターミナルビルの利便性向上に向けた改修も進めていく。   地方空港を含めて課題になっているのが、利用者が増加しているLCC(ロー・コスト・キャリア)への対応である。   中部空港では専用ターミナルビルを建設する。また地方空港については、LCCをはじめとした国際定期便の就航を強力に推進するため、空港ビル会社などが行う施設整備事業について国が補助する。   空港需要は急速に拡大している。 沖縄県と国内外とを結ぶ拠点として重要な役割を果たしている那覇空港では、沖縄振興をさらに推進していくため滑走路の増設工事が進められている。沖合を埋め立てて長さ2,700mの滑走路を新設する。       那覇空港の滑走路増設事業                          出典:国土交通省       福岡空港でもピーク時の慢性的な混雑を抜本的に解消するため、滑走路増設事業を実施中である。現在の滑走路に平行して2,500mの滑走路の新設を計画している。       福岡空港の滑走路増設事業                            出典:国土交通省        

2017.12.21

港湾

     四方を海に囲まれたわが国の経済や国民生活を支える               四方を海に囲まれた日本にとって空港とともに国内、海外を含めた旅客、物流の拠点になっているのが港湾である。   総数は994に及び、横浜や神戸に代表される国際港湾もあれば、地方港湾もある。内訳は、国際戦略港湾が5、国際拠点港湾が18で、重要港湾が102、地方港湾が869である。       港湾位置図                        出典:国土交通省       規模によって将来に向けた整備内容は異なるが、当面の課題として共通しているのが、被災した港湾施設の復旧・復興である。   東日本大震災では、岩手県から茨城県にかけて131もの港湾が被災した。特に被害が大きかったのが防波堤で、2017年度中に復旧を終える計画である。   また、重要港湾などは復旧・復興の拠点として地域経済を活性化させる役割を担う。例えば、八戸港では、背後地域でのLNG(液化天然ガス)の需要が増加しているほか、港湾に立地する企業の紙・パルプ、再生可能エネルギー関連の資材が増加したことによってコンテナの取扱量が増加を続けており、防波堤に加えて、航路や泊地の整備が進む。          防波堤の洗掘を防止する「粘り強い構造」へ       東日本大震災や熊本地震での教訓を踏まえて、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震への対応が各港湾に共通した大きな課題となっている。 防波堤については、「粘り強い構造」を導入していく。       粘り強い構造の海岸堤防(イメージ)            出典:国土交通省       天端部分の形状を工夫することによって、越流水が堤防背後の洗掘を防止。背後に被覆ブロックや洗掘防止マットを設置することによって、基礎マウンドと海底地盤の洗掘を防止するなどの補強策を実施していく。   また、被害が想定される地域には、物流、産業、市街地機能が高度に集積しており、護岸を嵩上げすることによって防護を固めていく。       粘り強い防波堤(高知港三里地区の整備検討施設の例)                          出典:国土交通省       越流対策の断面設定例                          出典:国土交通省          増加するクルーズ人口  船舶の大型化に対応していく         クイーンエリザベス       一方で国際競争力を高め、わが国の成長力を強化していくために大型船への対応や港湾機能の強化が求められている。   旅客については、クルーズ人口が増加し、船も大型船が主流になっている。国では、2020年のクルーズ旅客数を100万人とすることを目標にしていたが、2015年に5年前倒しで実現。500万人という新たな目標を設定した。潜在需要がある日本人のクルーズ客を取り込むため、国内の港を発着地とする外国のクルーズ船も増加している。   日本のクルーズ船は、約5万tの飛鳥Ⅱが最大だが、世界レベルから見れば、小型船である。海外での主流は10万t以上、最大は22万tを越え、乗客定員は飛鳥Ⅱの872人に対して5,400人と6倍に達する。       大型化が進むクルーズ船                     出典:国土交通省       日本に寄港するクルーズ船は大型化する一方であり、その数も年々増加している。 まずは、既存ストックを活用した受け入れ環境を整備していく。   岸壁に船を係留する係船柱や防眩材を改良する。移動式ボーディングブリッジや貨物の輸送システム、さらに旅客施設の建設や改良を行う地方自治体や民間事業者に対しては、国が補助したり、無利子貸付などの支援を実施していく。   貨物船も大型化している。 日本の船会社が就航させている最大のコンテナ船は、20フィートコンテナを約9,000個積載できる11万tクラスである。これに対して世界最大のコンテナ船は1万9,000個余りを積載できる約20万tと2倍に達する。スケールメリットを追求して大型化する傾向にあるのが、国際的な傾向である。   受け入れるためには、国際標準の水深と広さがあるターミナルが必要になってくる。 すでに東京、横浜、大阪、神戸の国際コンテナ戦略港湾で実施中である。横浜港では、水深を18mにすると同時に港湾道路の整備が進む。このほかの3港では、航路や泊地などを水深16mにする大水深コンテナターミナルのプロジェクトが進行中である。          進む港湾施設の老朽化  予防保全でコストを抑えて延命化する       多くの社会資本と同様に港湾施設も老朽化が進んでいる。 国土交通省の調べによると、水深4.5m以深の岸壁約5,000のうち、2015年は建設から50年以上経過したのは約1割だったが、2035年には約6割になる。海岸防波堤も約4割から約7割に増加する。   すでに桟橋の上部工の鉄筋が腐食してコンクリートが剥離したり、裏盛り土が吸い出されたことによって岸壁が沈下している劣化現象が発生している。   これに対応するため、予防保全型の維持管理に転換して計画的かつ効率的な改良工事を実施していく。港湾単位で点検に基づいて計画を作成し、ライフサイクルコストを抑制しながら施設の延命化に取り組んでいく。        

2017.12.21

道路維持管理

   機能確保へ増加する管理者の負担               経済・社会の基盤として中枢的な交通インフラの役割を果たしている道路。 機能を持続させていくため、定期的な点検など維持管理業務は不可欠である。しかも、その内容は日常的な巡回から橋梁やトンネルなどの構造物の補修、耐震補強まで幅広い。延長は膨大であり、管理者の負担は大きい。コスト削減策を含め、管理基準の見直しが繰り返されてきている。          120万kmを上回る国内の道路網       国内の道路は、総延長が121万600kmある。このうち、都道府県や市町村が管理する地方道が94.8%を占める。では、これだけ長大なインフラをどう管理しているのか。   指針となっているのが、国の維持管理基準である。日常的な業務としては、巡回や清掃がある。巡回については、通行量によって頻度が決められており、1日5万台以上の道路は原則として毎日、5,000台~5万台は2日に1回、それ以下は3日に1回だ。清掃には、路面、歩道、排水構造物があり、例えば三大都市圏は年12回、地方では年1回を目安として塵埃量に応じて実施されている。このほか、除草、街路樹の剪定、さらに積雪寒冷地では、凍結防止剤の散布や除雪などが日常的に行われている。   維持管理業務は、維持と補修に大別されている。 維持は、道路の異常などを日常的に確認し、交通に支障がないようにする。       維持                                                  出典:国土交通省       これに対して道路施設や構造物の健全性を確認し、機能を回復させ、強化するのが補修だ。舗装の補修のほか、橋梁やトンネルの点検・補修、のり面や斜面の防災対策などがある。構造物の点検には、それぞれ定期点検要領があり、各道路管理者ともこれに準じて実施することになっている。また、橋梁については、耐震補強が継続的に行われてきている。県庁所在地間を結ぶ道路のうち、大規模地震の発生が予測されている地域の橋梁から重点的に実施している。       補修                                                  出典:国土交通省          増加する管理延長に対して減少する予算       道路巡回                                              出典:国土交通省       巡回には、前述した通常巡回のほかに定期巡回、異常時巡回がある。通常巡回は、道路パトロールカーの車内から目視で確認する。これに対して定期巡回は、徒歩で確認する。年に1回の実施が原則だ。いずれも、機械化や省力化が難しい、いわば人海戦術による作業である。管理者にとっては、構造物の点検や補修を含めて財政面の大きな負担となっている。新規供用によって管理が必要な道路延長は増加しているのに対して、維持管理費は逆に減少している。   そこで、道路の機能を維持しながら負担を軽減するため、基準の見直しも実施されてきた。 例えば、道路清掃の実施回数は、塵埃の発生量に応じて実施できるようにした。除草については、かつては道路ののり面全体を対象にしていたが、交通に支障がある場所だけに限定するようにした。構造物については、損傷の少ないうちに補修をしてライフサイクルコストを削減する予防保全が実施されている。また、工法や施工面についても建設各社によって省力化できコスト削減にもつながる技術の開発が進んでいる。       予防保全 ひび割れの補修 塗装の塗替え         出典:国土交通省