日本のプロジェクトを探る一覧

2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方①

   2030年を目標にした6つのテーマ       首都圏で鉄道関連施設の再整備が進んでいる。国土交通省の交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」に沿ったもので、2030年を各事業の目標にしている。   6つの目標に沿って鉄道の新設や延伸、災害への対応、駅施設の質的進化、バリアフリー化の促進など多彩な事業が盛り込まれている          総延長は2,700㎞あまり 1,500駅が対象に   東京圏の鉄道とは都心を中心に約50㎞圏内の範囲と審議会では規定した。地下鉄や民間鉄道、JRの在来線、モノレール、新交通システム、路面電車を含めた鉄軌道を対象にした。   答申は2016年4月だが、その時点で総延長は2,705㎞、駅は1,500を越えていた。   1950年代にはわずか1,500㎞あまりだったが、着実に整備が進み、世界的に見ても充実した鉄道網に発達している。   一方で、鉄道を取り巻く環境も変化してきた。少子高齢化や人口の減少、首都直下地震など災害のリスクも高まっている。   訪日外国人が増加するなど各国との国際競争が高まり、2020年には東京オリンピックも控えている。   これらの状況を踏まえて、より質の高い東京圏の鉄道ネットワークを構築して、空港アクセスを改善、列車の遅延などへの対応やバリアフリー強化などを答申に盛り込んでいる。          国際競争力の高い鉄道へ   答申では、「東京圏の都市鉄道が目指すべき姿」として6つの項目を徹底している。   1つ目が「国際競争力の強化に資する都市鉄道」である。アジアの主要都市が急速に台頭してきている。都市間の競争力が激化し、東京圏の競争力の強化が喫緊の課題となっている。   交通は成長をけん引して経済成長を支える基盤であり、機能強化が求められている。国際競争力を強化する都市鉄道を実現するために航空や新幹線との連携強化、さらには国際競争力を高める拠点となる街づくりとの連携も必要だとしている。   2つ目は「豊かな国民生活に資する都市鉄道」である。サービス水準は世界のトップレベル。さらに豊かにするためには、混雑の緩和や速達性の向上、シームレス化を推進すべきだとしている。混雑緩和については、車両の長編成化や複々線化を進める。ソフト面では始業時間の変更やフレックスタイム制の導入などオフピーク通勤にも取り組む。これらによって東京圏の主要31区間での平均混雑率を150%にするなどの目標を設定している。   速達性は複々線化などによる輸送力の増強である。既存のネットワークを活用して相互直通運転を行うほか、新線の建設でもこれを念頭に整備効果を広範囲に普及させるのがミッションである。   3つ目は「まちづくりと連携した持続可能な都市鉄道」だ。急激な人口減少や少子高齢化など社会情勢を反映していく。「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの趣旨を踏まえながら駅や車両などの鉄道施設を整備していく。無料公衆無線LANなど外国人にも利用しやすい環境にする。          災害対策をさらに推進する   郊外では、少子高齢化や住宅の老朽化、コミュニティの希薄などを含めて鉄道事業者は問題意識と危機意識を持ち、地方公共団体とともに鉄道沿線のまちづくりに取り組むことが重要だとしている。   東京圏の鉄道は、ネットワークやサービス基準について世界的に見ても充実したレベルにある。ただし、駅については交通ネットワークのノード(節)としての役割やまちづくりの拠点としての重要性が増大しているのに対して改善の余地が大きい。   「全ての利用者にとって心地よくゆとりある次世代ステーションを創造していく」のが、4つ目の視点だ。バリアフリー化や外国人への対応、駅をまちの顔とするなど質的に進化させていく。   5つ目が「信頼と安心」である。わが国の鉄道は、運行の正確さで定評があるが、実際には遅延、遅れが日常的に発生している。朝夕の混雑から線路への落し物、さらには天候の不順による場合もある。事故や豪雪害の影響で何時間にもわたって乗客が車内にとじ込まれるケースが毎年のように発生している。鉄道事業者には、利用者への情報提供が求められている。   さらに6つ目として重要なのが、「災害対策の推進と取り組みの見える化」である。災害が発生して運行できなくなれば、駅には帰宅困難者が多く発生する。しかも、東京圏では首都直下地震の発生も高い確率で予測されている。   ハード面では高架橋などの耐震補強の対策を継続して進める。一方で大規模地震を想定した負傷者の救援救護体制、滞在者への救護体制の整備が求められている。                                    (2018年5月時点)      

2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方②

   国際競争力の強化を目指し空港アクセスを向上させる     京浜急行 京成電鉄     2030年を目標にした「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申では、6つの目標に沿って機能別に3つのプロジェクトに分類している。   「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」、そして「駅空間の質的進化に資するプロジェクト」である。では、どのようなプロジェクトがあるのか。          羽田空港と成田空港をより近くする   「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」は、「空港アクセスの向上に資するプロジェクト」と「国際競争力強化の拠点となる地域へのアクセス利便性の向上に資するプロジェクト」に分類されている。   空港アクセス関連は4つ。その1つ目が都心直結線の新設である。京浜急行本線の泉岳寺と京成電鉄の押上線間に新たな路線を建設して、羽田空港と成田空港間との直通相互運転ができるようにする。沿線の各駅に加えて東海道新幹線が停車し、建設中のリニア中央新幹線の始発駅である品川駅とも直結するルートとなる。新設区間の延長は11㎞。総事業費は4,400億円が見込まれている。途中には新東京駅を新設する計画である。都心部での大深度のトンネルを中心にしたプロジェクトとなる。事業主体に加えて事業性、さらに施工条件などの精査が求められるプロジェクトでもある。     都心直結線の新設     2つ目が羽田空港アクセス線であり、すでに紹介しているので詳細は省略する。延長が20.5㎞、総事業費が3,400億円。羽田空港と北関東の各地域とのアクセスが向上し、埼玉県の久喜駅では東武伊勢崎線と東北本線との相互直通運転化などの工夫によって、さらに広域圏からの利便性が向上することも期待されている。羽田空港アクセス線と関連して京葉線とりんかい線を相互直通運転化する。これによって、千葉方面との利便性が向上することになる。     羽田空港アクセス線の新設および京葉線・りんかい線相互直通運転化          JR、私鉄や地下鉄とも直通相互運転を   3つ目が空港新線の建設である。京浜急行玉川線の谷口橋と蒲田、空港線の京急蒲田と大鳥居間との新路線である。延長は合わせて5.7㎞、事業費は3,100億円である。実現すれば、東急東横線や東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線との相互直通運転も可能になる。新宿、渋谷、池袋のほか東京都北西部、埼玉県南西部と羽田空港が直結されることになる。すでに具体化に向けた事業計画の検討は進んでいる。ただし、線路の軌間が異なる区間もある。これらや事業費の負担割合など課題は多いのが実情である。     新空港線の新設     空港関連プロジェクトの4つ目は、京浜急行空港線の羽田空港国内線の引き上げ線の新設だ。終着駅である国内線ターミナル駅からさらに路線を500m延伸する。これによって折り返し運転の効率が高まる。同時に品川駅のホームも2面4線化することによって増発を可能にする計画である。すでに都内や周辺の各地からは鉄道のほか、バスなど複数のアクセスが整備されている。しかし、拠点の駅などへは乗り換えを伴うケースが多い。空港利用者は、海外旅行では大きなスーツケースを持参するなど乗り換えにも不便を伴う。     京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設     直通のルートが整備されれば、空港利用者の利便性は大幅に向上する。移動時間の短縮にもつながる。各プロジェクトとも事業者間の調整や事業費など課題は多いが、今後の進展が注目される。                                    (2018年5月時点)   ※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会      

2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方③

   都心と拠点地域のアクセスを向上する     つくばエクスプレス     東京の都心部には、複数のターミナルがある。多くの路線は、ここから各地方都市などへ放射線状に伸びている。   地方から都内を経由して他の地方に行く場合には、ターミナル間の移動を伴う場合が多い。JRの山の手線や地下鉄を利用したりする。   これを解消するために首都圏の鉄道では、各事業者間による相互直通運転が実施されてきた。   1960年には、都営浅草線と京成押上線が国内で初めて直結し、1968年には京急本線も加わり、3事業者間による直通運転が実現した。   2013年には、東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線、東急東横線、みなとみらい21線が一本になった。   自社路線内での直通運転化もある。例えば2001年にはJR湘南新宿ラインの開業によって、宇都宮線、高崎線と横須賀線が直結され、さらに2015年には上野東京ラインが開業して常磐線を加えた3路線が東海道線とつながった。            これらによって、1970年には855㎞だった相互直通運転が2015年には1,831㎞となり、東京圏の都市鉄道の総延長の75%を占めるまでになった。          つくばエクスプレスを東京駅へ延伸   国際競争力を高めるためにはさらなる利便性の向上が求められている。その具体策として答申が「国際競争力強化の拠点となる地域へのアクセス利便性の向上に資するプロジェクト」として示したのが4事業である。   1つ目が、都心の秋葉原駅と茨城県のつくば駅を結ぶ常磐新線(つくばエクスプレス)の延伸である。秋葉原駅から東京駅間まで延伸するものである。     常磐新線の延伸     常磐新線の建設の目的は2つあった。1つは常磐線の混雑緩和だ。都心から茨城方面へ向かう常磐線は、通勤路線であると同時に水戸や仙台方面への長距離路線でもある。沿線の開発によって、通勤客が増加し、解決策として新路線が建設されることになった。   もう1つが沿線の開発である。ニュータウンの開発が進み、つくばには研究学園都市もある。首都機能移転の構想もあり、都心と結ぶ鉄道が必要だったのである。   計画段階では、当然のことながら東京駅を起点とする構想もあった。しかし、東京と秋葉原間の事業費がネックとなり、秋葉原が起点となった経緯がある。答申によって当初の構想が復活したことになる。   新設する路線延長は2.1㎞。総事業費は1,400億円である。答申では、つくば国際戦略総合特区と新幹線のターミナルである東京駅を直接結ぶことにより研究開発拠点と圏域外との対流促進が期待できるとしている。   さらに、東京駅での乗り換えの利便性向上のために他の路線との接続を考慮した駅の位置を検討されることを期待しているとしている。          東京駅から臨海副都心への新設構想も   これと関連するのが2つ目の都心部・臨海地域地下鉄構想の新設と延伸した常磐新線との一体的整備である。   秋葉原から東京駅への常磐新線の延伸に加えて、銀座から臨海副都心の新国際展示場までの新路線を建設する。延長が8.6㎞、総事業費は6,500億円と試算されている。臨海副都心へは、新橋駅が起点のゆりかもめが主要なルート。実現すれば、アクセスの向上に加えて、山手線の混雑緩和にもつながる。課題は事業性だ。そこで常磐新線の延伸と合わせて整備し、直通運転を含めた事業化が提案されている。     都心部・臨海地域地下鉄構想の新設および同構想と常磐新線延伸の一体整備     3つ目も臨海副都心関連で、都営地下鉄有楽町線を豊洲から住吉まで延伸して半蔵門線に接続する。臨海副都心と都内東部の観光拠点や首都圏の北部地域とのアクセス向上を目的にしている。路線延長は5.2㎞、事業費は1,500億円である。すでに事業計画の検討は進んでいる。関連自治体や鉄道事業者間の費用分担や事業主体の選定などが課題となっている。     東京8号線(有楽町線)の延伸     4つ目は、都心部・品川地下鉄構想の新設と呼ばれるものだ。品川駅と地下鉄南北線の白金高輪駅を結ぶ。路線延長は2㎞、総事業費は1,600億円である。六本木などの都心部のエリアとリニア中央新幹線の起点ともなる品川駅とのアクセス向上が目的だが、検討の熟度が低く構想段階であるのが実情だという     都心部・品川地下鉄構想の新設     いずれのプロジェクトも利用者にとっては利便性が向上するのは確かだが、構想通りの利用者が実際にあり採算性が確保できるのか。事業費をいかに確保するか。関係者との調整や事業主体など、多くの課題が山積しているのも確かである。                                    (2018年5月時点)   ※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会      

2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方④

   首都圏と周辺部とのアクセス向上へ     東京圏は拡大を続けてきた。都心を中心に神奈川、埼玉、千葉などで宅地開発が進み、周辺部の通勤や通学利用者も増加し、対応するために路線の整備が進められてきた。複線から複々線化するなどして、輸送人員を増加し、スピードアップも図ってきている。   今後の都市鉄道のあり方についての答申でプロジェクトとして3つ目に取り上げているのが「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実」である。   答申には、延べ16のプロジェクトがある。新路線の建設や延伸、既存の貨物路線を活用するものなど複数の事業手法を提案している。          東西の路線でネットワークを形成   東京圏の鉄道は、都心を中心にして郊外へと放射線状に整備されてきた。大阪や名古屋など多くの都市も同様である。これに対して地域圏相互での利用者の需要もある。   これに着目したのが埼玉県内での東西交通大宮ルートの新設である。東北、上越、北陸新幹線が分岐し、在来線との乗り継ぎ駅でもある大宮駅と地下鉄南北線との直通相互運転をしている埼玉高速鉄道の浦和美園駅間に中量軌道システムを新設しようとするものである。     東西交通大宮ルートの新設     大宮駅に隣接して、さいたま新都心があり、浦和美園駅にはサッカーのさいたまスタジアムもある。東西路線が建設されることによってひとつのネットワークが形成されて、沿線住民の利便性も大幅に向上する。延長が12㎞、総事業費は400億円。収支採算性には課題があり、関係自治体などで新たな需要の創出につながる沿線開発など事業計画については十分な検討が必要だと答申では指摘している。   関連するのが埼玉高速鉄道の延伸である。現在は終点となっている浦和美園駅からJR宇都宮線の蓮田駅に新たな路線を建設する。延長は13.7㎞、総事業費は2,200億円である。実現すれば埼玉県東部と都心とのアクセスは大幅に向上する。     埼玉高速鉄道線の延伸          延伸によって地下鉄と既存の路線を接続   埼玉県内への都市からのルートについては、地下鉄大江戸線をJR武蔵野線の東所沢駅まで延伸するという提案もある。光が丘駅から東所沢駅まで12.1㎞、総事業費は2,300億円との試算だ。東京都から埼玉県へのルートであり関係自治体のほか、事業主体を含めた調整が課題の一つとみられている。     東京12号線(大江戸線)の延伸     地下鉄からの延伸では、半蔵門線の押上駅から亀有などを経由して千葉県の野田市へというプロジェクトもある。延長が30.5㎞、総事業費は5,800億円に及ぶ。都内の北東部から埼玉県の西部、千葉県の北西部が結ばれることになる。茨城県では、さらなる延伸も検討している。     東京8号線の延伸     押上からの延伸が、もう一つある。千葉県の松戸までへの計画である。延長12.8㎞。総事業費3,800億円。千葉県北西部と都心とのアクセス向上を目的にしたものである。     東京11号線の延伸     いずれのプロジェクトも利用者にとっては、便利になるのは確かだが、都内から周辺の県への延伸では、都や県に加えて関係自治体も当然のことながら多くなる。調整に時間が掛かるのは必至であり、多くのプロジェクトで採算性も課題になる。これらをどう調整し解決していくのか、実現へのルートが模索されている。                                    (2018年5月時点)   ※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会      

2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方⑤

   都心部を迂回する環状路線の新設も       答申で示された地域の成長に応じたネットワークの充実を目指した16のプロジェクトのうち、最も大規模な構想として、区部周辺部環状交通の新設がある。   千葉県の葛西臨海公園から北上して西に向かい、赤羽を経由し、田園調布に至るループ状の路線である。都心に入らずに各地域の相互アクセスの向上を目的にしたものである。延長は60.7㎞、総事業費は1兆2,400億円に及ぶ。葛西臨海公園ではJR京葉線、赤羽駅でJR京浜東北、宇都宮、高崎各線と接続するほか、田園調布では東急多摩川線と結ばれることになる。     区部周辺部環状公共交通の新設     さらに、沿線では都心から放射状に伸びる鉄道網とも連絡し、新たな鉄道ネットワークが形成されることになる。実現に向けての大きな課題が事業費であり、中量軌道の導入や整備効果の高い区間から優先的に建設していくなどの検討が行われることを期待すると答申では指摘している。   もう一つの環状ルートが横浜環状鉄道である。鶴見から日吉、横浜市郊外の中山、東戸塚などを経て、市内中心部の元町・中華街に至る路線である。延長が34.4㎞。横浜市内の環状方向のアクセス向上を期待するものだが、総事業費は7,700億円掛かり、ここでも整備方法の検討が必要になってくる。     横浜環状鉄道の新設          京葉線を延伸して高速東西軸にする   延伸や接続新線の建設によって新たなネットワークの形成を目指すプロジェクトもある。   その一つが都心から千葉方面への総武線と京葉線の接続新線である。京葉線の新木場から市川塩浜付近まで京葉線を複々線化して、ここから総武線の津田沼への路線を建設する。延長は合わせて38.5㎞、総事業費は6,200億円である。新木場駅ではりんかい線、津田沼駅では総武線との相互直通運転を行う。     総武線・京葉線接続新線の新設     一方で、現在は東京駅が終着の京葉線を西に伸ばして中央線に接続する新路線の構想もある。新宿を経由して三鷹駅で中央線に乗り入れる。延長19.5㎞、総事業費は4,500億円である。JRの湘南新宿ラインや上野東京ラインの高速南北軸に対して高速東西軸が形成されることになる。中央線との相互直通運転を行うことで東京西部から都心を経て千葉方面へのアクセスが向上する。これに合わせて三鷹から立川駅まで中央線を複々線化することも提案されている。     京葉線の中央線方面延伸および中央線の複々線化          貨物線を旅客との併用にする   貨物線を活用するプロジェクトもある。東海道貨物支線貨客併用化と呼ぶものである。品川、東京テレポートから、浜川崎を経て横浜市内の桜木町に至るルートである。延長33.3㎞、事業費は5,500億円。併用化に合わせて一部路線は新設をする。都心部と横浜方面を結ぶと同時に途中にある京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区へのアクセスルートとなる。事業化では、貨物輸送への影響も考慮した検討が必要になる。   また、浜川崎から川崎までは川崎アプローチ線の新設構想もある。川崎新町までは既存の南部線を改良し、さらに川崎まで新路線を建設して東海道線に接続する     東海道貨物支線貨客併用化および川崎アプローチ線の新設     このほか、答申では多摩都市モノレールや小田急多摩線の延伸、私鉄各線の複々線化計画なども盛り込まれている。いずれも利便性の向上や混雑緩和などを目指したもので、実現すれば利用者にとってのメリットは大きい。ただ、関係者間の調整や事業費の確保といったテーマが山積しているのも現実であり、今後の進展が注目される。                                    (2018年5月時点)   ※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会      

2018.04.17

首都高再生①

   オリンピックに向けて一気に整備を促進       動き出した首都高速道路の日本橋の地下化計画。かねてから景観を阻害していると指摘のあった一方で、老朽化して更新の時期を迎えているという背景もある。   首都高は前回の1964年に開催された東京オリンピックに向けて急速に整備された。建設用地の取得交渉をしている猶予はない。   着目したのが河川だった。そこで、日本橋に代表されるように多くの路線が河川上に建設された。更新の時期を迎えている首都高をどう再生していくのか。          建設から半世紀以上を経て相次いで更新の時期へ   首都高は、1962年に京橋~芝浦間が開通し、オリンピック後も供用延長を伸ばしてきた。首都圏の大動脈としての役割を果たしてきたが、それだけに大型車両の割合も多い。しかも多くの区間が高架橋であり、過酷な使用環境を強いられてきている。供用から50年以上を経過し、老朽化によって疲弊し、多くの区間、部分で悲鳴を上げているのが実情である。   補修を繰り返すことで、どうにか機能は維持しているが、抜本的な再生策が求められている。日本橋を中心にした首都高都心環状線の地下化には、景観に加えて老朽化が背景にあり、いわば一石二鳥の策として事業は本格化することになった。同時期に建設された他の区間も同様に更新の時期を迎えているということである。   社会資本の更新時期は50年が一つの目安とされているが、前回の東京オリンピックに向けて建設された首都高は多くの区間が、その時期を迎えている。2012年には首都高の再生に関する有識者会議が提言書をまとめている。国もまた提言を踏まえて再生の将来像を作成している。          都心環状線を中心にした放射路線  郊外からの通過交通が集中する宿命に   首都高は都心環状線を中心にして首都圏近郊へ向けて各路線が放射状に伸びている。まず建設されたのが、前回の東京オリンピックに向けて集中的に整備された都心部である。その後に放射路線が建設されて、常磐自動車道や東北自動車道、中央自動車道、東名高速道路と接続するネットワークが完成した。   ところが、東北方面から例えば関西方面に向かうには首都高を経由しなければならない。通過車両にとっては、巨大なジャンクション(JCT)の役割を果たし、大型車両を中心にした渋滞が慢性化していた。これを解消するために中央環状線のほか、都内を迂回する東京外環自動車道や首都圏外郭環状道路などの整備が進み、通過交通は減少してきたという経緯はある。   しかし、いまだに慢性的な渋滞が随所で発生し、大型車両の割合も多い。高架橋やトンネルなどの構造物の比率が約95%に達していることもあり、計画的な補修を実施してきているものの、必要とされる損傷は増加しているのが実情である。   前回のオリンピックは、首都高を一気に整備する好機でもあった。しかし、50年以上経過し、補修しながらどうにか使い続けるという状況ではすまなくなってきているといえよう。さらに、首都直下型地震など自然災害への対応も求められている。高架橋などの耐震補強は順次実施してきているが、老朽化と合わせた抜本策が求められている。   そこで、2014年11月に国は首都高の更新計画の事業を認可した。大規模更新が3路線、大規模修繕が1路線で、用地費を含めた事業費を6,262億円としている。このうち、大規模修繕に盛り込まれているのが、日本橋区間を中心にした都心環状線の竹橋~江戸川橋間である。事業費は1,412億円で、事業期間は2015~2028年としていた。しかし、地下を前提にすることになったため、事業費は大幅に増加する。   都心環状線では、銀座~新富町間の1.2km、1号羽田線では東品川桟橋~鮫洲埋め立て地間1.7kmと高速大師橋の0.3km、3号渋谷線の池尻~三軒茶屋間の1.5kmが大規模更新の対象区間で、延べ8km、事業費は合わせて3,775億円と試算している。 一方の大規模修繕は東名高速道路の接続する3号渋谷線と中央高速道路につながる4号新宿線などで延べ55km、事業費は合わせて2,487億円が想定されている。     首都高 1号羽田線 首都高 4号新宿線     大半の区間が供用から50年以上を経過し、首都高のなかでも通過交通が多く大型車両などによる劣化が進行している。しかも首都高にとって重要な区間であり、先行して大規模な改修を実施することになった。                                    (2018年4月時点)      

2018.04.17

首都高再生②

   日本橋を覆っていた高架橋を撤去する           日本の道路の原点である「お江戸日本橋」の上空を覆っていた高速道路の高架橋を撤去する計画が進んでいる   景観を阻害しているという指摘がかねてからあった。老朽化していることもあり、現状での補修などをせずに思い切って地下化する検討が国土交通省、東京都、事業主体となる首都高速道路株式会社、さらに地元の中央区や街の再生に取り組む地元の団体など官民共同で本格化した。       日本橋上空の現状                          出典:国土交通省          供用を急ぎ河川を用地に建設             首都高は、前回の1964年に開催された東京オリンピックに向けて一気に整備された。   建設用地を確保するために地元住民と交渉していたのでは時間が掛かり、オリンピックに間に合わない。買収費用などのコストも掛かる。 そこで、都内にあった河川に高架橋の橋脚を設置することにした。日本橋の上に架かる高架橋もその一つだ。                  江戸五街道の起点である日本橋は、明治に道路元標が設置された。ルネッサンス様式の石造りの橋であり、1999年には国の重要文化財にも指定されている。周辺の日本橋エリアでは、再開発が進み、国内だけでなく海外からの観光客も増えている。日本橋をバックにして写真撮影する姿も増えているが、肝心の橋自体は、さらに上空に架かる橋に覆われて日の光が遮られている。 景観を阻害しているとして、政府の有識者会議からも地下化に言及した提言もあったが、実現に至らなかった経緯がある。     日本橋周辺の首都高速の現状           首都高速を撤去した場合のイメージ                                         出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書       しかし、今回は国を含めて本腰を入れて取り組むことになってきた。景観問題だけではなく既存の高架橋自体が老朽化してきているといったことなども背景にはある。          都市景観の改善や首都高の老朽化も背景に                  建設から50年以上を経過し、2014年には、首都高大規模更新計画が策定されている。2016年には、日本橋周辺での街づくりの取り組みが国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加された。これによって、都市計画決定が迅速になるなどの行政手続きが優遇されて、街づくりが進んだ。   2017年6月には、地元の民間団体である名橋「日本橋」保存会と日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会が、首都高の高架橋撤去についての請願書を参院議長に提出。中央区からも7月に国や都に対して地下化の申し入れが提出されるなど地元の機運も高まっている。   これらを受けて、地下化事業に向けての検討が本格化することになった。区間は日本橋を含めた首都高都心環状線の竹橋~江戸橋ジャンクション(JCT)間の約2.9kmが候補となっている。具体的な区間や線形、構造などの計画は今後、関係者間で協議していく。2020年の東京オリンピック、パラリンピック開催後に着工する計画である。   事業費は数億円規模になる。これをいかに捻出するかも今後の大きな課題である。現状の高架橋のままで改修したとしても約1,400億円掛かると首都高速道路株式会社では試算していた。地下化すれば、大幅に膨らむことになる。かつて地下化構想が浮上した時の試算では4,000億円~5,000億円と見積もられていた。 事業費を圧縮するためには、建設面でのコスト削減に加えて、民間との連携も必要になってくる。周辺で進む再開発ビルの下に地下化するための道路空間を設けたり、都心環状線と並行して走る八重洲線を活用して施工区間を短くしたりする方法もある。   1日に約10万台が走行する高架橋を生かしながらの工事となり、技術的な課題も多い。首都高の新設路線では、既存の地下鉄などを避けて、大深度地下にしてきたが、今回は逆に地下鉄の上の浅い部分にする計画も検討されている。周辺の再開発ビルなどとの建設に合わせれば、工事費の削減にもつながる。   具体策については、検討すべき課題が山積しているが、都市景観を一新する代表的な事業となる。日本橋の上に青空が戻ってくる日に期待がかかっている。                                                                                (2018年4月時点)      

2018.04.17

首都高再生③

   都心から放射状に拡大した路線は総延長約320km                                       出典:国土交通省       首都高は都心部の環状線を中心にして郊外へと路線を伸ばしてきた。千葉、埼玉、神奈川などへとネットワークを拡大して多くの高速道路網と接続している。   国が再生計画を策定した時点で首都高の総延長は約320kmである。このうち約5割が建設から30年以上を経過していた。その割合は年とともに増すばかりであり、これを裏付けるように損傷による補修件数は増加の一途を辿っている。まさに右肩上がりで、2002年から2009年のわずか7年で約3倍に増加したという統計もある。          合流と分離を繰り返す 複雑な平面線形    前回の東京オリンピックに向けて河川などの公共用地を利用して一気に整備したため、平面線形も複雑なのも首都高にとっては宿命的な課題となっている。 合流や分流が多く、2車線が合流したのに、その先は2車線という部分もある。さらに分流では車線を横切るようにしなければならない部分も多い。   都心環状線では延長約15kmのうち右側への分流と合流が24ヵ所ある。これに対して、延長347kmの東名高速道路には1ヵ所もない。一般道から首都高に入った車が右の分岐車線に行こうとすれば、車線変更を繰り返す必要がある。走行安全性に影響があるばかりでなく、走行速度の低下を余儀なくされ、渋滞の要因にもなっている。   高速道路でありながら急カーブが連続する区間もある。ガードレールや防音壁が設置されているが、路線の両側にはビルや民家が林立している。高架橋が圧迫感を与えて、日本橋に代表されるように都市景観を阻害している。河川を占有しているため、都市にとっては貴重な水辺の空間が失われている。     采女橋周辺 出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書          首都直下型地震などの自然災害への対応策も課題に   老朽化対策に加えて首都高の再生で求められているのが、首都直下型地震など自然災害への対応である。阪神・淡路大震災では、阪神高速道路の高架橋が倒壊した。これを教訓にして耐震補強が実施されてきた。   だが、政府の想定では多くの建物の倒壊や火災による膨大な死者、経済損失などがあるとしている。首都の中枢機能への影響も避けられない。   自然災害の発生そのものは防げなくとも、被災者の支援や迅速な復興に向けた対策が求められている。首都高は、災害発生時の緊急輸送道路としての機能を発揮しなければならず、さらに自然災害への対策を強化し、整備が進む圏央道などの3環状道路とのネットワークを強化し、複数の路線を選択できる体制にすることが重要なテーマとなっている。     東名高速から東京都心へ至るパターン(試算)                   出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書     そのためにも首都高の要である都心環状線を中心にして確実な老朽化対策を実施し、都市高速としての機能を維持していく必要がある。単なる高齢化対策にとどまらない将来を見据えて世界都市東京を視野に入れた再生策が首都高には求められている。                                      (2018年4月時点)      

2018.03.20

地方創生①

   折り返しとなった2017年  新展開に向けた新たな基本方針を策定       看板掛けの様子       地方をいかに活性化させるか。国が取り組んでいる地方創生が転換期を迎えている。2014年にスタートし、基本とする目標は2020年。中間の2017年には既存の取り組みを加速化するため、新たな展開を図る方針を打ち出した。          加速する少子高齢化や過疎化が背景に   地方創生とはどのような事業なのか。「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と呼び、2014年に地方創生型交付金を1,700億円計上し、国は総合戦略を策定した。         翌年には、地方版の戦略を策定するなど体制を整備。さらに、2016年には交付金の対象を広げるなどして本格稼働をした。   そのうえで、中間年である2017年6月には、新展開に向けた「基本方針2017」を閣議決定したというのがおおまかな経緯だ。   2017年地方創生の新展開       地方創生とは、いかに地域を活性化させるかであり、その背景には高齢化や過疎化などがある。少子高齢化が指摘されて久しいが、わが国の人口自体も2006年をピークに減少を続けている。2016年10月現在の総人口は1億2,693万3,000人であり、6年連続して減少している。   一方で、65歳以上の高齢者人口は3,459万1,000人と総人口に占める割合が27.3%に達し、世界的に見ても空前の規模と速度で高齢化が進行している。出生数は97万7,000人で、明治からの統計以降初めて100万人を割り込んだ。推計では、2065年の総人口は8,808万人。高齢者人口の割合は、38.4%にとなる。   この傾向が、より進行しているのが地方である。さらに、東京への一極集中が継続している。東京圏の人口は3,629万4,000人となり、全人口の4分の1を占めている。   では、地域経済の現状はどうなのか。完全失業率は全ての都道府県で改善されて、史上初めて有効求人倍率は1倍を超えた。統計面では雇用、所得環境の改善が続いている。   しかし、消費や生産などの経済活動には地域間のバラツキがあり、東京圏と他の地域との間には所得などの差が生じているのが実情だ。   これらの現状を踏まえて策定されたのが、「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」である。情報、人材、財政支援の3本の矢を掲げている。地域資源を活用したしごとづくりや空き店舗、遊休農地、古民家などの遊休資産を活用していく。地域経済を牽引していける事業にも投資する。   地方創生版・3本の矢       東京一極集中を是正するために大学改革や地方への企業の本社移転を促進する。政府機関も地方に移転するほか、中央省庁のサテライトオフィスの設置も検討していく方針だ。   2020年の目標年次までには、若者雇用者数を新たに9万8,000人創出する。農林水産業の6次産業化を進めて市場規模を2014年の約2倍に相当する10兆円に拡大。さらに結婚・子育て、まちづくりの支援を実施していく。   では、その実施状況はどうなのだろうか。地方創生には、交付金のほかに中心市街地活性化、地域再生、都市再生、環境モデル都市・環境未来都市などの事業が展開されてきている。                                    (2018年3月時点)                         ※図版の出典:内閣官房内閣広報室               

2018.03.20

地方創生②

  中心市街地活性化          集約型の都市にする中心市街地活性化   地域活性化に向けた地方自治体の取り組みを国が支援する地方創生には、主なものだけで15の施策がある。まちづくりや産業遺産の世界遺産登録推進、特区の認定など多彩なメニューが用意されている。   中でも全国各地で実施されているのが中心市街地活性化である。認定された計画は、実施から10年間で200を超えている。          人口減少や超高齢化社会に対応する   この取り組みの背景にあるのは、人口減少や超高齢化社会の到来である。すでに、わが国の人口は2006年をピークに減少に転じ、高齢化率も高まり、2050年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると推計されている。   まちは、これまで拡散を続けてきた。住宅や郊外型の商業施設だけでなく、病院、市役所、学校も郊外に分散している。かつて賑わっていた中心地の商店街はシャッター通りとなり、空洞化が進んでいる。   特に地方では車社会となり、運転ができなければ生活にも困窮するような状況になっている。ガソリンの消費による環境負荷が増大し、CO2(二酸化炭素)削減を目指す政策に逆行しているという実情もある。   高齢者を含めた市民が暮らしやすいまちにする。拡散に歯止めをかけてアクセスしやすい生活拠点づくりに取り組んでいくのが、中心市街地活性化である。コンセプトは、「コンパクトなまちづくり」。中心部に都市機能が集約した生活拠点を再生していく。                 既存のストックを活用していく   拡散すれば、上下水道などライフラインの整備が必要になり、維持管理にもコストが掛かる。集約すれば、自治体の財政負担は軽減することになる。   中心地には、公共交通ネットワークや都市機能、インフラなどの既存のストックがある。これらを活用していくことで、かつての賑わいを取り戻すことを目指していく。   活性化のための計画は、市街地の整備、交通アクセス、まちなか居住、公益施設、商業・業務の5つの要素で構成される。単に活気のなくなった商店街を復活させるのではなく、マスタープランに沿って総合的にまちづくりを推進する。         行政や市民、商店、企業などが将来像を共有して、まずビジョンを描く。そのうえで、実現に向けて5年程度で実行可能なプログラムを明確にする。   さらに重要なのが持続していくことだ。そこで、都市空間の管理運営、土地の合理的活用、地域固有の価値の創出、地域経済環境の構築、市民・民間の参加の5つの視点を持って取り組んでいくことが重要になってくる。例えば、中心地に残されている昭和の街並みを活用したり、地場産業や生産者と連携したりしてヒト、モノ、カネが循環するような地域経済を構築する。                 国が補助を含めて手厚い支援策   これに対して国は、中心市街地活性化法を改正して総合的かつ一体的な支援をしてきた。法律、税制の特例や補助事業を実施してきている。   事例としては、空きビルを公共公益施設や集客施設へ改修するほか、まちなか居住を促進するため、良質な共同住宅の供給などがある。さらに環境改善と防災機能の向上に向けた再開発、道路や公園、駐車場などの都市基盤施設の整備も補助対象となる。一定の条件を満たせば、交付金の対象となる事業枠を拡大する制度など手厚い支援策を設けている。   各事業の実施に向けて、国は調査、計画の立案・調整に協力するほか、必要に応じてコンサルタントを派遣する。   さらに、計画の促進を図るために、各自治体からの事前相談も受け付けている。内閣府の中心市街地活性化担当室のほか、国土交通省の各地方整備局でも対応している。   自治体は、申請マニュアルに基づいて基本計画を作成して内閣府の担当室に申請し、基準に適合しているかなどの審査を経て、認定されることになる。   第1号は、2007年2月の富山市と青森市。これを皮切りに増加を続け、2017年6月までに141市212計画が認定された。すでに半数以上が計画を完了して、6月時点で実施段階にあるのは94計画。1期計画を終えて2期計画に取り組んでいる自治体もある。                                    (2018年3月時点)                              ※図版の出典:国土交通省      

2018.03.20

地方創生③

  中心市街地活性化(富山市)              全国に先駆けて取り組んだ富山市   中心市街地活性化基本計画の認定第1号となった富山市。2007年からの1期計画、2012年からの2期計画に加えて2017年4月からは3期計画を継続して実施している。   平坦な地形で、「家の1軒も建てられなければ男ではない」と言われるほど持家志向が高く、戦後は一貫して郊外への開発が進み、移動は自動車に依存してきた。   県庁や市役所などの主要な公共施設は市内中心部にあるが、市街地が拡散し続けてきた。全国各地の市町村と同様に大型店舗が郊外に進出して、かつては賑わっていた「総曲輪」と呼ばれる中心部の商店街は衰退した。   郊外へと拡散した結果、市街地の人口密度は42.2ha/人と県庁所在地の中で最も低くなってしまっていた。拡散に伴って自家用車の利用率も高まり、通勤は83.8%、買い物など全ての目的を含めた利用率は72.2%を占め、全国の中核都市の中でも最も高い比率になっていた。          拡散によって増加する行政コスト   当然のことながら公共交通機関の利用者は減少し、1989年から2010年までの統計で、JRは29%、私鉄が43%、北陸地方で唯一の路面電車は38%、路線バスに至っては70%も減少した。   一方で、高齢者を中心に車を使えない市民の割合が約3割に達していたのが実情だった。さらに拡散によって除雪や道路清掃などの維持管理費は増加。住民一人当たりの行政コストは、2005年の2500円から20年後には2800円へと12%アップすると予測されていた。   これらを背景に富山市が全国の自治体の中でもいち早く実施することにしたのが、中心市街地活性化だった。目指したのは、公共交通を軸とした拠点集約型のコンパクトなまちづくりだ。   富山市が目指す「お団子と串」の都市構造  出典:富山市       第1期計画では、3つの柱と定量的な目標を設定した。 一つ目が公共交通機関の利便性の向上である。車に頼らずに暮らせる中心市街地にする。路面電車の利用者を1.3倍に増やす目標を設定して新たに0.9kmの路線を新設し、富山駅から中心市街地を周回する環状線路線にした。車両も都市景観に調和するよう新たにデザインして、電停(路面電車の停留所)や車道、歩道などを含めたトータルデザインを採用した。   廃線となった富山駅と郊外の岩瀬浜とを結ぶJR富山港線も富山ライトレールとして復活させた。わが国初の本格的ライトレール(次世代型路面電車)である。これによって高齢者の外出機会の増加や自動車からの転換によって平日の利用者は、2.2倍に増加した。          全天候型のイベント広場を整備   二つ目が賑わい拠点の創出で、歩行者の通行量を1.3倍にする計画だった。中心市街地の総曲輪に百貨店が移転するのに合わせてグランドプラザと呼ぶ全天候型の多目的イベント空間を整備した。約1,400m2の広さがあり、277インチの大型映像装置も設置。演奏会や蚤の市、さらには結婚式などで土日や祭日の利用率はほぼ100%になった。   グランドプラザ    出典:富山市       三つ目がまちなか居住の推進である。5年間で1.1倍に増やす目標を設定した。マンションなど良質な住宅の建設事業者への助成やこれらを購入したり、中心部に転居する市民に対する支援制度を設けた。   戸建て住宅志向が強い富山市では、1戸当たりの平均延床面積も日本一だった。しかし、市が中心市街地の活性化に力を入れたこともあってマンションの建設が増加し、完成前に完売するケースもでてきた。若い世代では住宅に対する意識も変わり、中心市街地での生活の利便性などに着目するようになってきたと見られている。          高齢者を支援する「おでかけ定期券」   高齢者を支援し、公共交通機関の利用を促進するために「おでかけ定期券」と呼ぶ制度も新設した。満65歳以上の市民を対象にして市内各地から中心市街地までのバスなど公共交通の料金を100円に割引するものだ。最も遠距離の場合は、通常ならば1200円程度かかる。65歳以上の市民の約24%が所有し、1日平均約2,600人が利用するようになった。   このほか、1期計画の成果としては、総曲輪の休日の歩行者数が5年間で56%増加し、路面電車の平均乗車人数も17%増えた。また、全国的には地価が下落しているが、中心市街地は横ばいで推移し、固定資産税や都市計画税などの税収が減少していない。専門学校の開設や分譲マンションの建設など民間事業者の投資も活発化している。          2017年4月からは3期計画を継続実施   続く2期計画では、1期で整備したグランドプラザ周辺の賑わいを中心商業地域全体に波及させるほか、北陸新幹線の開業に伴って二極化が想定される駅周辺と中心商業地区との回遊性を向上させることなどを目標にした。   区画整理や市街地再開発など25の基幹事業と41の効果促進事業を計画。中心商店街の空き店舗に出店する事業者に対して改装費や家賃を補助する「新規出店サポート事業補助金」を継続して実施するほか、「まちなか活性化事業サポート補助金」といった制度も継続するなどして民間投資を促進した。   さらに2017年4月からの3期計画では、中心市街地の活性化を市全体の活力向上につなげていく戦略を立てている。医療や福祉を充実させ、安全・安心なまちとし、健康で文化的な生活など魅力ある都市空間の実現を目指していく。北陸新幹線の開業も追い風となっている。富山駅の南北一体化を進め、中心市街地全体の回遊性を向上させていく。さらに高齢者がいつまでも元気に自立して暮らせる富山市版CCRC(生涯活躍のまち)の実現を目指している。                                     (2018年3月時点)      

2018.03.20

地方創生④

  中心市街地活性化(青森市)              認定第1号の青森市  注目される継続実施した第2期の成果   富山市とともに中心市街地活性化基本計画の認定第1号となった青森市。第1期計画の実績や課題を踏まえて2012年からは第2期計画に取り組んできた。   10年以上にも及ぶ取り組みによって中心市街地がにぎわいの交流拠点としての基盤や活動組織も整ってきたなどの成果を踏まえて、これまでの「創造」から「確立」へのステップアップを目指してきた。          ハイカラな地区だった中心市街地   計画期間は2012年4月から2018年3月まで。対象区域は商業施設や業務、公益施設が集積している地区を中心に青森駅、国道、国内外からの海の玄関口となる大型旅客船バースの主要交通機関で囲まれた116.7haとした。   中心市街地が空洞化と無縁だった時代には、最先端の商店街があるハイカラな地区として市内外から注目されていた。多くの都市がそうであったように「街に行く」と言えば、中心商店街に行くことを意味していた。   青森市の中心市街地区域図       第2期計画では、街歩きが楽しめる回遊動線の整備、交流機能の強化、公共交通機関の利便性の向上や定住人口の増加など、歩いて暮らすことのできる質の高い生活空間であるウォーカブルタウン(遊歩街)の確立を目指してきた。   目標は4項目。まず、多くの人が訪れたくなる魅力ある街にして歩行者の通行量を増やす。多様な人々を迎え入れる交流の街づくりを進める。歩いて暮らしやすくする街ぐらしを促進して夜間人口を増加させる。そして、商業を活性化し空き地や空き店舗率を低減させていく。          4項目の目標に沿って具体的な数値も設定   これらの目標について具体的な数値も設定した。青森駅周辺地区など市街地の整備改善によって歩行者の通行量は1日当たり3,506人の増加を見込んだ。観光客については、青函連絡船の八甲田丸やベイエリアにあるアスパム、ワ・ラッセといった施設を中心に年間約62万人増とした。空地や空き店舗率は3.3ポイント改善させて13.1%にする計画だった。         主要な事業として、青森駅周辺整備がある。自由通路や駅、都市サービス施設を一体的に整備するものだ。駅の東と西口の機能を分担して多様な交通手段に対応できる交通ターミナルも整備する。実施主体は青森市である。市民の台所と呼ばれる古川市場では、老朽化した建物や空き店舗の共同化、集約化によって居住や公共的通路、ポケットパークを整えた施設の整備に地元の街づくり協議会が取り組んできた。     古川市場地区の状況               55の事業を展開   優良建築物等整備事業を実施してきたのが、中新町ウエスト地区である。老朽化した中小の小売店舗などを共同化、集約化して魅力的な商業空間やパブリックスペース、居住など複合的な機能を持つ施設にするものだ   ケーブルテレビのネットワークを活用した情報発信センターのほか、教育・人的交流の活動拠点やオフィスなどの多機能型の施設にする事業も実施してきた。まちづくり合同会社とまちづくり協議会が実施主体である。   このほか、第2期計画での事業は55ある。土地区画整理や市街地再開発、道路や公園、駐車場など公共関連が7事業。子育て支援など都市福祉施設が7事業。公営住宅を始めとした住宅供給と居住環境向上のための事業が3事業である。   そして、中小小売業など商業の活性化に関連したものが38事業ある。商業ベンチャー支援、空店舗対策、活動拠点の設置、雪灯りまつりアート縁日といったイベントの開催。観光ガイドの育成と運営、青森港の国際化の推進など多彩な事業を展開してきた。具体的にどのような成果があったのか。今後も注目していきたい。                                    (2018年3月時点)                                ※図版の出典:青森市      

2018.03.27

地方創生⑤

  ビルの再生 (事例①:セントポルタビル ②:マルヤガーデンズ)          利用されなくなったビルをリニューアルして中心市街地を活性化する   中心市街地を活性化する手法として、利用されなくなったビルをリニューアルして活用する事例が全国各地にある。大規模商業施設や医療・福祉施設、市役所などの公共施設など多彩だ。いずれも郊外から人々を中心地に呼び戻すのが目的である。実施例は全国で100数例あるが、国土交通省の調査をもとに、ここでは代表的な4つの成功事例に加えて、市役所が移転した事例も紹介する。          収益力に見合った規模に減築する。地域貢献への熱意も後押し       思い切った減築によって経済合理性を確保したのが、大分市のセントポルタビルである。1973年に建設された大規模商業施設の大分サティで、建物は地下1階、地上8階建てだった。施設の閉鎖後にビルを取得した地元の企業が実施したのが、地上の3階から8階部分を撤去し、残った地下1階から2階までをリニューアルして再生させる減築だった。       事業計画では、地元から要望の強かった食品スーパーをテナントとすることを前提に検討した。収益力のあるテナントを見込めない土地条件で、耐震基準を満たしていない古いビルだった。全面解体するとなれば多くの費用がかかる。減築の背景には、これら多くの困難な事情があった。   結果として、リニューアルによって耐震性が確保され、3階以上の商業施設に必要な避難階段が不要になり、フロア構成の柔軟性が確保できた。   施設の規模が需要に見合うようになり、維持管理コストも収益力に見合うレベルに下げることができた。2階屋上を駐車場として活用でき、利用しやすくなるなど多くのメリットがあり、成功に結びついた。   屋上駐車場     当初は、駅前という立地に対して収益力の低い食品スーパーでは、「不動産事業として成立しない」という評価が社内にあったという。それでも、このプロジェクトに取り組むことにしたのは、「地元企業として地域に貢献する」と社長が決断したからだった。   地元の商業事情にも精通する経験とアイデアを活かして導き出した結論が減築だった。不動産事業としての収益よりも地域貢献に対する熱意に支えられた成功事例とも言える。   リニューアル自体は民間事業だが、地下1階は大分市の無料駐車場にした。市が工事負担金と賃借料を支払っている。公民連携の事業でもあった。          コミュニティ施設を併設して買い物客以外も呼び込む   鹿児島市では、百貨店をコミュニティを創造するテナント型の商業施設に再生した。1961年に建設された鹿児島三越をリニューアルしたマルヤガーデンズである。地下1階、地上8階建てで屋上も利用されている。         コミュニティスペースを設けることで、商業施設に来ることがない人をも呼び込むというアイデアが出発点。誰でも借りることができるフリースペースを地下1階を含めた6つのフロアに設置した。   地元のNPO団体を中心に週末は予約でほぼ一杯の状態で、1ヵ月の平均稼働率も5割を超えているという。買い物客以外を呼び込むことに成功した事例である。   地下1階が生鮮食品とフードコート、1~6階が衣料品や雑貨、書籍、7階が飲食店や映画館、8階がブライダルハウスというフロア構成で、夏には屋上でビアガーデンも開いている。   屋上庭園     三越の撤退表明後、可能な限り早く時間を掛けずに集約力のある施設に再生させることを目指した。そこで、リニューアルでは、避難安全検証法を用いて建築確認が必要ない改修にとどめた。   度重なる増築によって増えてしまった階段も同じ法律によって整理した。これによって、商業施設として使うことのできる面積の増床が実現した。生み出された増床部分はテナントスペースだけでなく、ゆとりやくつろぎを提供するスペースとしても活用している。                                    (2018年3月時点)                              ※図版の出典:国土交通省      

2018.03.27

地方創生⑥

  ビルの再生(事例③:悠楓園 ④:温泉プラザ山鹿)        商業施設を日本初の介護サービス対応型マンションに全面改修       日本ではじめてのタイプのサービス付きマンションに再生した事例もある。栃木県佐野市のツインハートビルである。建物は、1981年に建設されたもので、地下1階地上5階建て。デパートの十字屋佐野店として営業を続けてきた。   メインテナントであった十字屋の撤退後、再生策として打ち出されたのが、悠楓園と呼ぶサービス対応型マンションを中心とした全面改修だった。地下1階が駐車場、1階は老人介護施設と事務所、2~4階が悠楓園、5階は介護老人保健施設と会議室というフロア構成にした。   商業施設はフロア面積が大きい。マンションなどの居住施設に転用する場合には、建物の奥行の深さが問題になったりする。窓は少なく外光が建物内部まで差し込まない。そこで、悠楓園では2つの工夫をした。南側の外壁を後退させ、東西面には吹き抜けを設置して採光条件を改善した。   各フロアは中廊下を広くして障害者でも移動しやすいスペースを確保した。空調の効いた快適な空間であり、居住者のコミュニケーションの場としても活用できるようにした。   マンション中廊下 多目的スペース     運営面での悠楓園の特徴は、介護サービス対応のマンションであると同時に入所制限や収入制限、年齢制限などの入居条件がない点にある。幅広い多様な居住者に対応できる施設とした。   地元で福祉施設を開設、運営してきた医師の経験を生かしたものだった。既存の入所型福祉施設や有料老人ホームでは対応しきれない居住者のニーズを見据えたものである。   1階には介護老人施設や介護サービス施設、医院が入居した。関連する複数のテナントが入ることによって、悠楓園の入居者への介護や給食などのサービスの提供が可能になり、不動産事業としての安定にもつながっている。          区分所有者の資産を明確に分離して全員の合意を形成した       複数の所有者がいる建物の再生では、その合意の形成が大きな課題となる。そこで、各所有者の資産を明確に分離し実現させたのが、熊本県山鹿市の温泉プラザ山鹿である。   既存の建物は、商業や住宅などで構成される複合施設だった。中心となるビルは地上10階建て。区分所有建物であり、山鹿市と核店舗のサンリブ、管理組合の3者が約3分の1ずつ権利を保有していた。   再生のきっかけは、核店舗である商業施設の撤退だった。既存の建物は、1975年に建設されたもので現状の耐震基準を下回り、補強工事に過大な費用がかかることも分かった。そこで、山鹿市は、施設の老朽化や再生による合併などを踏まえて温泉施設(さくら湯)を別棟で建設して、独自で維持管理をする方針を示した。   さくら湯完成予想図     一方で、管理組合に所属する区分所有者の中には、撤退を検討している者もいた。地域の需要に見合わない過剰な商業床の解消も課題となった。対応策として、建物を一部解体して面積を減らし、撤退希望者の所有床は買い取ることにした。   3者の資産の明確な分離を図ったうえで、施設を再生する計画をまとめ、区分所有者を含めた85人の全員合意による建て替え決議が成立にこぎつけた。撤退を決めた50店舗分の権利床は、建て替え組合が改修工事後に時価で買い取り、さらに時価と改修工事負担金の相当額で協同組合が買い取ってテナントを誘致するなどの施設運営をすることにしたのである。   しかし、時価での購入には多くの抵抗があった。購入時点の坪単価は30万円~40万円だったものが、時価は約10万円程度。バブル期前には最高で120万円もして、その時期に購入した者もいたためだ。しかし、権利床を持ち続けると、所有している店を閉めても共益費を負担していかなければならない。こうしたことを丁寧かつ繰り返し説明することで、全ての合意形成にこぎつけたという。   さらに、その背景には長年にわたって務めてきた管理組合理事長の、「なんとか再生したい」という強い信念があった。熱意をもって区分所有者との協議を行ってきた立役者がいたことが合意形成に結びついたとも言われている。   建て替え組合が買い取った権利床は、合わせて約20億円。その原資は、暮らし・にぎわい再生事業補助金と戦略的中心市街地商業等活性化支援事業費補助金を活用した。山鹿市が整備を進めているさくら湯も暮らし・にぎわい再生事業補助金の対象となっており、市と組合が連携して戦略的に補助金を活用した再生の事例である。                                    (2018年3月時点)                              ※図版の出典:国土交通省            

2018.03.27

地方創生⑦

  ビルの再生(事例⑤:栃木市役所)          閉店した中心市街地の商業ビルに老朽化し手狭だった市役所が移転する   新庁舎     中心市街地にある営業を停止した百貨店のビルに市役所が移転した。改修して議場も移した。栃木県の南部にあって蔵の街として観光名所にもなっている栃木市の事例である。   蔵の街通りとも呼ばれる市のメインストリートは、JRや東武鉄道の駅から徒歩15分程度にある。観光の中心地でもある。対象となったビルは、県内を中心に営業展開する福田屋が1990年に建設した。地域密着の百貨店だった。   地上6階建てで、延床面積が2万3,000m2余りあり、通りに面した建物の背後には立体駐車場もあった。当初は盛況だったが、郊外に大型店ができるなどして、売り上げが減少、2010年に福田屋は閉店することを決定した。   一方で、栃木市は既存の庁舎が建設から50年以上を経過して、町村合併などによって職員が増加し、手狭になっていた。      立体駐車場   旧庁舎     庁舎の面積はわずか6,500m2。職員の数から換算すると3倍近い面積が必要だった。建て替えを検討していた時期でもあった。事業費は概算で約65億円。市にとっては大きな負担だ。   そこに舞い込んできたのが、福田屋からの閉店後の建物は市に無償で提供するとの申し出だった。試算したところ、移転のための改修費が約21億円で、3分の1程度で済むことがわかった。立地も中心市街地であり、市民も利用しやすい。駐車場もある。   委員会を設置して検討を重ねた市は、移転することを決定した。事業費が削減できるだけでなく、市民が訪れることによって中心市街地の活性化にもつながるのとの判断もあった。          盛況だった1階の食品売り場は新たなテナントを募集して存続   閉店当時も賑わっていた1階の生鮮食品売り場は残すことにした。2階以上を市庁舎にしたのである。公募の結果、1階は残して欲しいという市民の要望が根強かった生鮮食品を中心に東武百貨店が入店することになった。1階部分の面積を除いても2階以上のフロアーだけで市役所が必要な面積を確保できるためでもあった。      オープンフロア(2階)   事務室     ただし、商業施設だった建物をオフィスに改修するとなると、まず問題になるのが採光である。商業施設は窓が少なく、外光に頼らない照明設計をしている。そこで、商業施設では不可欠だった外部の避難階段を撤去して窓を設けた。   4階と5階部分には議場も移転した。高い階高と傍聴席も必要なので、4階の天井を撤去してワンフロアーにした。問題は耐震性能である。幸いにも建設当初に増築することを前提にしていたために基準を満たすことができた。   議場     事業費は、当初の約21億円から補修工事費などが膨らみ約28億円になった。さらに建物は無償だったものの土地や別棟の駐車場の購入費、備品や引っ越し費用、防災設備費などがかかり総額で約61億円となった。   試算を大きく上回ったが、市役所の移転跡地は再利用できる。中心市街地のメインストリートに市役所が移転できたという大きなメリットもある。その背景には、百貨店の閉店と市役所の建て替え時期が重なり、さらに県南部への進出を模索していた東武百貨店とのタイミングが一致したことによって実現した事例とも言えよう。                                    (2018年3月時点)                                ※図版の出典:栃木市      

2018.02.20

2018年度政府予算案①

   概論            6年連続で過去最大を更新   増加を続ける国家予算。昨年末に閣議決定された2018年度予算案は、国の基本的な予算規模を示す一般会計の総額が97兆7,128億円で、6年連続して過去最大を更新している。   高齢化を背景に社会保障費が3分の1を超えるまでに膨張したことなどが大きな要因。政府は通常国会に予算案を提出して年度内の成立を目指す。          公共事業関係費は約6兆円   国土交通省を中心にした公共事業関係費は前年度とほぼ同額の5兆9,789億円を計上している。予算編成の基本的な考えは、安定的に事業費を確保したうえで、生産性向上のためのインフラ整備のほか、豪雨・台風災害などを対する防災・減災対策を重点的に推進していく。   主な内容としては、三大都市圏の環状道路などの整備を加速する。水害や土砂災害が発生した地域の再発防止策を進めてより安心・安全を確保する。道路と港湾などのインフラの連携による整備効果の最大化や下水道事業での民間活用の推進、既存ダムの有効活用、水害を防ぐ調整池の効率的整備など予算の質の向上を徹底していく方針である。          物流ネットワークを強化する   具体的な予算額は、生産性向上のためのインフラ整備では、物流ネットワークの強化が2,283億円。   前年度に比べて4.6%の増加である。首都、中部、近畿の環状道路や空港・港湾へのアクセス道路の整備が主な内容である。低金利の状況を活かして財政投融資を活用することで整備を促進する。橋梁の耐震強化対策を含めて融資規模は1兆5,000億円になる。   新規に高規格幹線道路のIC(インターチェンジ)のアクセス道路の整備を促進するための地方自治体への個別補助制度を創設する。LNGバンカリング(燃料供給)拠点の形成を支援する予算も新たに計上した。2020年から硫黄酸化物の排出規制が強化され、LNG燃料船が拡大することを見据えたものだ。         港湾関係では、国際コンテナ戦略港湾や国際バルク戦略港湾の機能を強化していく。鉄道関係では整備新幹線の整備に755億円。函館北斗~札幌間、金沢~敦賀間、武雄温泉~長崎間の事業費に加えて、敦賀~大阪間の詳細なルートについての調査費も計上した。          自然災害による被害の再発を防止する   災害対策も重点項目の一つである。2017年7月の九州北部豪雨や2016年8月北海道・東北豪雨などによって水害や土砂災害が発生した地域で洪水時の水位を下げる河道掘削、砂防堰堤の整備などを進めて被害の再発を防止する。大量の土砂で埋まった公共土木施設の復旧のため、事業費の3分の2以上を国庫で負担する。   既存施設の老朽化対策では、道路に6.5%増の3,683億円、河川管理施設等に1,8%増の1,986億円を計上した。長寿命化計画に沿って維持管理を行い、予防保全を前提としたメンテナンスサイクルを確立。コストの縮減や平準化を図るほか、橋梁の耐震強化などの防災・震災対策を進めていく。   大きな課題である東日本大震災からの復旧・復興は合わせて4,564億円である。このうち、復旧が1,059億円。河川、海岸、道路、港湾、下水道の公共土木施設の復旧事業を継続して実施する。被災地の復興は、3,505億円だ。道路や港湾などの復興支援のほか、市街地整備に伴う道路整備などの社会資本整備総合交付金として961億円を計上している。                                       (2018年2月時点)      

2018.02.20

2018年度政府予算案②

  道路・鉄道        民間投資を誘発する都市圏の環状道路   2018年度予算案の公共事業関係費は、安定的な確保をしたうえで「質の向上」の徹底を基本方針に据えている。   具体策の一つが三大都市圏の環状道路の整備の加速などの交通インフラである。     圏央道の整備状況                           予算額は、環状道路が4.6%増の2,283億円。首都圏の圏央道では、順次開通してきたことによって首都高速道路など都心に集中していた交通が転換されて迂回路としての役割を果たしている。沿道では、大型物流施設などの民間投資を誘発する波及効果もある。   統計では、5年の間に立地件数は90件増加、これに伴う従業者数は9,000人増加している。地価も上昇した。工業地の上昇率トップ10は圏央道の沿線に集中している。   さらに、圏央道については、未供用区間の整備促進に加えて暫定2車線区間の4車線化も進めていく。低金利の状況を利用して財政投融資を活用する。他の路線も含めて40年間の長期間固定で1兆5,000億円を追加する方針である。これによって、高速道路各社の金利負担が軽減され、投資余力が増大する。   圏央道では、埼玉県の久喜白岡JCTと千葉県の大栄JCT間を2024年までに全線4車線化し、同時期までに千葉県内の未供用区間の開通を目指す。中部圏の東海環状についても未供用区間の整備や4車線化について2024年を予定している。          新幹線の整備に加えて都市鉄道を強化する   鉄道については基幹的な高速輸送体系である整備新幹線の整備を着実に進める方針だ。予算額は755億円である。   整備新幹線とは、北海道、東北、北陸、九州の鹿児島ルートと西九州ルートの5路線。   整備新幹線5路線                       北海道新幹線については、新函館北斗~札幌間211㎞を2030年度末までに供用開始する計画である。東北新幹線はすでに全線開通している。2015年に金沢まで開業した北陸新幹線は、敦賀までの113㎞を2022年度末までに完成させる。九州新幹線西九州ルートの武雄温泉~長崎間66㎞も22年度末を予定しているが、可能な限り前倒しする方針である。   鉄道関連では、このほか都市や幹線の機能を強化する。予算額は247億円。大都市の活性化や競争力強化のために都市鉄道の相互直通化を進めると同時にバリアフリー化など駅の機能改善や耐震化、老朽化対策といった安全対策に取り組んでいく。   このための補助事業を実施する。新線建設のほか、耐震対策や浸水対策などの大規模改良工事を促進するのが都市鉄道整備事業費補助である。具体例としては、福岡市地下鉄七隈線延伸事業などがある。   駅の改良と併せてバリアフリー施設の整備などを支援するのが、鉄道駅総合改善事業費補助である。観光案内所や保育施設も併設する。次世代ステーション創造事業と呼んでいる。橋梁などの耐震化や老朽化対策を促進していくのが、鉄道施設総合安全対策事業費補助である。鋼橋には重防食塗装を行うなどして耐久性を高めていく。   このほか、交通インフラについては新たな交付金を創設する方針である。社会資本整備総合交付金(交通拠点連携集中支援事業)と呼ぶものだ。地方自治体が実施する空港や港湾へのアクセス道路整備、連続立体交差事業について国庫債務負担行為を活用しながら計画的、集中的に実施していく事業を支援するものである。   アクセス道路が整備されれば、物流は効率化して生産性は向上する。連続立体交差化でも鉄道を高架や地下化することによって、踏切による渋滞が解消され、交通が円滑化されることで物流の効率化につながる。限られた財政の中で「質の向上」を基本方針とした新年度予算の一例である。                                        (2018年2月時点)                                ※図版の出典:国土交通省                          

2018.02.20

2018年度政府予算案③

  港湾        大型化する船舶に対応するため港湾を大水深化して機能を強化する   島国である日本にとって港湾機能の強化は、永遠ともいえるテーマであった。経済や国際競争力を高めていくためには重要な施策である。新年度予算でまず、港湾関係で打ち出しているのが、国際コンテナ戦略港湾の機能強化である。政府案での予算額は766億円だ。   コンテナ船は、世界的に大型化する傾向にあり、国内に寄港する基幹航路の船舶の維持や拡大を図るため、予算案では「集荷」、「創荷」、「競争力強化」を3本柱にして取り組んでいく方針である。     集荷                     創貨 集荷促進のために投入されている国内最大の 内航コンテナ船 流通加工機能を備えた物流施設     競争力強化   大水深コンテナターミナルの整備状況(横浜港)       集荷については、阪神港や京浜港といった国際戦略港湾へ国内各地からの貨物を集約する。コンテナ船の大型化に伴って各寄港地での積み下ろし時間が長期化する傾向にある。そこで、各地からは内航のコンテナ船で運搬して寄港地を絞り込み、国際コンテナ戦略港湾への利用を転換し、所要日数などの輸送サービスを向上していく。   さらに急務となっているのが、大型化による国際水準の深さや広さがある大水深コンテナターミナルである。1980年代から2000年頃までは積載できるコンテナ数が5,000個前後だったが、その後に急速に大型化して現在では2万個を積載できる大型船も登場した。これに伴って、岸壁の必要水深は深くなり、より広い荷役のためのターミナルが必要になってきているからである。   港の背後に物流施設を整備するのが創荷である。流通加工機能を備えた施設を建設することで取扱量を増やし、港湾関連事業を活性化していく。   大型化への対応は輸送コストの削減にもつながる。例えば、北海道や東北地方では飼料用とうもろこしなどの穀物を中型船で輸入していた。しかし、大型船が接岸可能な大水深の岸壁が整備されれば、輸送コストは4割程度削減可能だと試算されている     釧路港(飼料用とうもろこし)の例       石炭についても徳山下松港で水深19mの大型岸壁の整備が進む。2019年度に完成予定であり、現在の1.5倍以上の大型船の接岸が可能になる。共同購入することによって、輸送コストは2割程度削減できる見込みである。       徳山下松港(石炭)の例          世界水準の生産性を備えたAIコンテナターミナルの実現へ   国内には世界一生産性が高いと言われる横浜港のコンテナターミナルがあるが、それ以外の港で荷役機械の遠隔操作や自動化を導入しているのは、名古屋港の飛島ふ頭だけである。   そこで、世界最高水準の生産性を備えるAIコンテナターミナルの実現にも取り組んでいく。将来的な労働力不足に備えて世界有数の国際港湾労働者の高い熟練技術力と遠隔操作化や自動化を融合する。京浜港と阪神港を対象にして荷役を効率化し、横浜港に続いて世界一高い生産性が高いコンテナターミナルを実現する。       AIコンテナターミナル(イメージ)                             AIを活用したターミナルオペレーションによって、積み下ろしの作業回数を最小化できるよう配置計画を最適化する。情報技術を活用して搬入や搬出も迅速化する。荷役についても世界最高水準と言われるクレーンの熟練オペレータの操作、経験を分析して定式化することによって新規オペレータの早期の習熟度向上をめざしていくなどの施策も盛り込んでいる。          2020年には500万人へ増加するクルーズ人口に対応する   貨物だけでなく旅客への対応も課題になってきている。世界のクルーズ人口の増加や船舶自体の大型化が進み、訪日するクルーズ旅客が2020年には年間500万人になることを国では目標にしている。寄港回数を見ても2017年は前年に比べても1.33倍に増加している。   既存のストックを活用したハード・ソフト両面の受け入れ体制に加えて、官民一体となった国際クルーズ拠点を整備していく。予算額は143億円。大型船に対応できる岸壁のほか、屋根付きの通路や移動式のボーディングブリッジなどの整備を国が支援することによって、旅客の利便性や安全性を向上させていく。             国内では、注目度が低かったクルーズだが、世界的には手軽なレジャーとして利用者は増加の一途。日本発着のクルーズを運行する海外の船会社も増加傾向にある。                                     (2018年2月時点)                                 ※図版の出典:国土交通省      

2018.02.20

2018年度政府予算案④

   災害対策        自然災害に備える防災対策  各事業について増加を計上   予算編成の中で重点課題としているのが災害対策である。2018年度だけでなく自然災害が多発するわが国にとって永遠とも言えるテーマなのである。公共投資予算が横ばいを続ける中で予算額も増加している。   例えば激甚な水害・土砂災害が発生した地域の再発防止対策には、前年度に比べて24%増の492億円を計上している。2017年7月に発生した九州北部豪雨や2016年8月の北海道・東北豪雨などの激しい災害を受けた地域で、河川や砂防堰堤整備などの再発防止策に取り組んでいく。   九州北豪雨で被災した公共土木施設については、迅速な復旧を行うために公共土木施設等の災害復旧予算を533億円を当てる。自治体が実施する川幅を広げるなどの事業についても3分の2以上を国が補助する。   災害時には不可欠となる道路の代替路線の整備に5.5%増の3,494億円を計上している。防災や耐震化対策を推進する老朽化対策などの戦略維持管理には、道路が6.5%増の3,683億円、河川管理施設には1.8%増の1,986億円を当てて予防保全を前提としたメンテナンスサイクルを確立していく。   加えて頻発する風水害や土砂災害、大規模地震、津波に対する交付金として1兆1,117億円を計上している。自治体が実施する防災対策やインフラの長寿命化対策について集中的に支援するものである。   また、大量の土砂で閉塞した公共土木施設の復旧や川幅を広げるなどの改良的な事業も補助対象とすることにした。          利用者が増加傾向にある  東日本大震災関連の復興道路   東日本大震災関連では、復興や支援のための道路整備等が2,090億円である。2017年11月には、三陸沿岸道路の山田~宮古南間が震災後の新規事業として着手した区間で初めて開通している。   さらに被災した三陸沿岸道路の仙台~釜石間は2018年度までに約9割、東北自動車道の釜石~花巻間は年度内の全線開通を目指す。   すでに整備が進んだことによって、東北自動車道の釜石~花巻間の利用が促進されており、過去5年間でコンテナ取扱量は約1.6倍、利用する企業数は2.5倍に増加しているという統計もある。          九州北部豪雨の被災地では  河川などを緊急的に整備する   記憶にも新しい2017年7月に発生した九州北部豪雨。甚大な被害が発生した筑後川水系では、緊急的かつ集中的な復旧関連事業を計画している。決壊した堤防などの復旧と合わせて下流部の河川改修を実施して地域全体の安全を早期に確保する。                    河川災害復旧等関連緊急事業と呼ぶ制度を採用する。約4年間で改修事業を実施することによって再発防止を図るものだ。河川の流量が5%以上減少することが見込まれることや全体事業費が10億円以上であることなどが補助の採択基準となる。   このほか、水害や土砂災害によって人的被害が発生した地域の再発防止に492億円を計上している。   対象の一例が2017年7月の梅雨前線に伴う豪雨で被災した秋田県の雄物川である。705戸の家屋が浸水した。堤防などを整備して氾濫を未然に防ぐ。   九州北部豪雨で山腹崩壊に伴う土砂の流出等で下流の集落に被害が発生した福岡県の赤谷川では砂防堰堤などでも防止策を実施していく。     2017年に発生した災害の例        雄物川(秋田県)               赤谷川(福岡県)          効率的な予算執行に向けて  事業内容の見直しも実施した   予算の執行については、効率的な整備のための見直しも実施した。首都圏の荒川中流域では、埼玉県南部に既存の第一に加えて、新たな調整池を計画している。事業は多くの用地確保を伴う面整備であり、補償方法に加えて工期縮減などの効率的な整備方法についても検討を重ねてきた       荒川流域図       第一調整池による洪水調節状況(1999年8月洪水)       これによって、工期の削減により効果的である工費の縮減などによる計画を策定。当初の予定では3カ所だった新規の調整池を2カ所所とし、約3,500億円程度と見込んでいた総事業費は1,700億円程度にまで削減できることになった。工期も30年から13年程度まで短縮できる見通しだ。2018年度の新規事業化に向けた手続きを進める予定である。       荒川調整池の事業計画図                                       (2018年2月時点)                               ※図版の出典:国土交通省      

2017.11.08

羽田空港アクセス線

   首都圏の鉄道網を強化する         品川新駅(仮称)予定地       首都圏の鉄道整備についての検討が進んでいる。国際競争力強化の必要性や少子高齢化への対応、首都直下地震など災害リスクの高まりなどを踏まえたもので、国土交通省では2016年4月に「東京圏における今後の都市鉄道のありかたについて(案)」をまとめている。   2030年を念頭に具体的な事業内容についても言及し、すでに実施に移されている事業もある。中でも注目の事業が羽田空港アクセス線だ。JR東日本が計画しているもので、羽田空港と既存の路線とを結び、直通運転をする。          羽田空港へ3つのルート           羽田空港アクセス線 3つのルート(路線図)            出典:国土交通省       アクセス線には3つのルートがある。まず、既存の貨物駅である東京貨物ターミナルから羽田空港の第1、第2ターミナルの間に設ける羽田空港新駅までアクセス新線を建設する。延長が約6㎞の地下路線となる。   3ルートは、東京貨物ターミナル駅から別れ、東京駅方面へ向かうのが東山手ルートである。休止路線となっている東海道貨物線の大汐線を利用して田町駅付近で東海道本線に乗り入れる。接続路線として田町駅付近に大汐短絡線を建設する。東海道線に乗り入れることによって東京から上野、さらに東京上野ラインによって宇都宮線、高崎線、常磐線との直通運転も可能になる。                      新宿方面に向かうのが西山手ルートである。東京貨物ターミナルから東品川短絡線を建設して、品川シーサイド駅~大井町駅間でりんかい線に合流し、大崎駅付近で山手貨物線に乗り入れる。すでにりんかい線との相互直通運転を行っている埼京線のほか、湘南新宿ラインとの直通運転などが想定されている。   もう一つが、臨海部ルートである。りんかい線の回送線を複線化してりんかい線の営業路線に乗り入れる。終点の新木場駅では、京葉線と路線がつながっている。          関東近郊の各地からの利便性が向上   構想が明らかになったのは2014年。国土交通省交通政策審議会の東京圏の鉄道のありかたを検討していた小委員会でJR東日本が計画していることを表明した。総事業費は約3,200億円。羽田空港までの地下路線のほか、短絡線を建設したりするため、事業期間は10年としていた。   都心から羽田空港への鉄道アクセスは、羽田東京モノレールのほか、京浜急行が乗り入れており、運行時間の短縮も進む。京浜急行の品川駅~羽田空港駅間は、1998年には最速25分だったが、蒲田駅の改良などによって、2012年には14分に短縮された。モノレールも昭和島駅の追い越し設備の整備による空港快速の運行によって浜松町駅~羽田空港第1ビル間が最速17分で結ばれるようになっている。   しかし、いずれも乗り換えが必要であり、国際線ターミナル開業後は大型の荷物を持った利用客が増加していた。これに対して羽田空港アクセス線が開業すれば、乗り換えの必要がなくなることによって、所要時間が大幅に短縮される。千葉、茨木、埼玉、栃木、群馬など首都圏近郊の各地から羽田空港へのアクセスが向上する。また、休止線などの既存のストックを活用することによって全線新線に比べて早期整備が可能になる。                                                                               (2017年11月時点)